tag:blogger.com,1999:blog-42082765439039961772024-03-14T16:56:31.225+09:00ようこの小説ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.comBlogger72125tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-79180085081979189912011-07-31T13:26:00.000+09:002011-07-31T13:26:59.335+09:00鴨太郎の一日『鴨太郎の一日』<br />
<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://2.bp.blogspot.com/-m4Fmc2Sv1Wo/TjTRZWES4eI/AAAAAAAAAJI/wpiJpAnmoBI/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_1.JPG" imageanchor="1" style="clear: left; float: left; margin-bottom: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="150" src="http://2.bp.blogspot.com/-m4Fmc2Sv1Wo/TjTRZWES4eI/AAAAAAAAAJI/wpiJpAnmoBI/s200/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_1.JPG" width="200" /></a></div><br />
俺、カルガモの鴨太郎。<br />
俺の居住地は茨城県の千波湖の畔にある公<br />
園なんだ。<br />
毎日、沢山の人間が来るんだよ。 <br />
千波湖の周りは、人間達が走り回ってるん<br />
だ。なんでも、ジョギングって言うらしいけ<br />
どね。人間は千波湖の周りを、なんで走って<br />
るのか、鴨の俺にはわかんない。<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://4.bp.blogspot.com/-F0zTWGRGmSs/TjTSJhCsCsI/AAAAAAAAAJU/pfiYoHoJ9Wc/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_7.JPG" imageanchor="1" style="clear: right; float: right; margin-bottom: 1em; margin-left: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://4.bp.blogspot.com/-F0zTWGRGmSs/TjTSJhCsCsI/AAAAAAAAAJU/pfiYoHoJ9Wc/s320/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_7.JPG" width="320" /></a></div> 人間たちが走りまわってる、その外側は人<br />
間が操縦する乗り物が、走ってるんだ。<br />
俺の居る公園は、その千波湖の周りを走る<br />
道路を隔てた向かい側にあるのさ。<br />
<br />
俺はこの公園が気に入ってるんだ。池の水<br />
は綺麗だし、芝生には俺の好物の虫や草が生<br />
えてるしね。<br />
<br />
一方、千波湖の方はどうかって言うと、水<br />
質は茶色でね。お世辞にも綺麗って言えない<br />
んだな、これが。<br />
だけど、時には広い千波湖で、伸び伸びと<br />
泳ぎたい時も有るってもんだろ。<br />
<a href="http://2.bp.blogspot.com/-OWZ3AG9Nqck/TjTThoBkA0I/AAAAAAAAAJY/d703vw8cly4/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_8.JPG" imageanchor="1" style="clear: right; float: right; margin-bottom: 1em; margin-left: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://2.bp.blogspot.com/-OWZ3AG9Nqck/TjTThoBkA0I/AAAAAAAAAJY/d703vw8cly4/s320/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_8.JPG" width="320" /></a><br />
<br />
それで、千波湖へ行く時もあるんだけどさ。<br />
これが、危ないんだ。<br />
歩いて、道路を横断しようものなら、いつ、<br />
人間の操縦する乗り物の餌食にされるか分っ<br />
たもんじゃない。先日も仲間の鴨次郎が、歩<br />
いて道路を渡ろうとしたら、そいつに踏み潰<br />
されそうになったって言うんだ。危機一髪、<br />
災難は免れたらしいけどね。<br />
そんな訳で、千波湖へ渡る時は、空を飛んで、<br />
一気に道路を飛び越えるんだ。<br />
<a href="http://4.bp.blogspot.com/-pgotYdEPh_E/TjTT_cJb_LI/AAAAAAAAAJc/rNcKrwnRJtw/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_6.JPG" imageanchor="1" style="clear: right; float: right; margin-bottom: 1em; margin-left: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://4.bp.blogspot.com/-pgotYdEPh_E/TjTT_cJb_LI/AAAAAAAAAJc/rNcKrwnRJtw/s320/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_6.JPG" width="320" /></a> <br />
<br />
ま、こんな話はいいとして。<br />
ここ数日、大雨が続いてね。嫌な天気だね。<br />
今日は、久々に晴れて、日差しも強くてね。<br />
暑かった。こんな日は池に入って、のんび<br />
りとしているのが一番。<br />
と、そこへ人間が近づいて来た。<br />
ま、いつもの人間だよ。人間の小さいのは<br />
苦手でね。俺たちを追い回す事があるのさ。<br />
だけど、人間の大きいのは大丈夫さ。<br />
池から上がって、芝生の上に座っていたん<br />
だ。すると、大きい人間が近づいて来てね。<br />
何か、手に持ってる。俺に何か食べ物をくれ<br />
るのか?いや、そうじゃないらしい。そいつ<br />
を手にかざして、俺に向けてる。一メートル<br />
手前まで、近づいて来た。<br />
<br />
<a href="http://3.bp.blogspot.com/-pmNZykiqB1g/TjTU5JTRG8I/AAAAAAAAAJg/TuXdc-3cqkk/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_3.JPG" imageanchor="1" style="clear: right; float: right; margin-bottom: 1em; margin-left: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://3.bp.blogspot.com/-pmNZykiqB1g/TjTU5JTRG8I/AAAAAAAAAJg/TuXdc-3cqkk/s320/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_3.JPG" width="320" /></a><br />
<br />
俺は人間を無視して、芝生の上に座ってい<br />
ると、更に少しづつ近づいてくる。<br />
もう、50センチ手前くらいまで、近づい<br />
て来た。手に持った物を俺にかざしてる。<br />
(おいおい。そんなに俺に近づくんじゃねー<br />
よ。食べ物をくれるんなら別だけど)<br />
人間が、うざいので、俺は、その場を退散<br />
した。<br />
(ちぇっ。せっかく寛いでいたのに、人間に<br />
邪魔された。もう、俺を追ってくるなよ)<br />
俺は、その場を離れた。 あれ?人間は<br />
まだ、俺を追ってくるよ。勘弁してくれよ。<br />
今度来るときは、何か食べ物を持って来いよ。<br />
俺は歩く速度を早めて人間から遠ざかった。<br />
<br />
<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://1.bp.blogspot.com/-Y0lud4nY5Hg/TjTVEQ68-sI/AAAAAAAAAJk/eQpByTwKq4k/s1600/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_5.JPG" imageanchor="1" style="clear: right; float: right; margin-bottom: 1em; margin-left: 1em;"><img border="0" height="240" src="http://1.bp.blogspot.com/-Y0lud4nY5Hg/TjTVEQ68-sI/AAAAAAAAAJk/eQpByTwKq4k/s320/%25E9%25B4%25A8%25E5%25A4%25AA%25E9%2583%258E_5.JPG" width="320" /></a></div><br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-83053410318719850772011-07-23T22:53:00.000+09:002011-07-23T22:53:57.405+09:00『手鏡』 『手鏡』<br />
<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
近所にリサイクルショップが開店しました。<br />
今日は、学校の帰りに、お友達と、そのお店<br />
に寄ってみることにしました。<br />
「ねえねえ。これ見て、かわいいでしょ」<br />
雑貨コーナーを見ていた、お友達の美子が、<br />
熊のプーさんを型どった貯金箱を手に取って、<br />
私に見せます。「うん。かわいいね」と相槌<br />
を打ちながら近くのコーナーを見ると、アン<br />
ティーク調の手鏡が目に入りました。<br />
その手鏡の背面にはバラを型どった模様が<br />
描かれていました。私は妙に、その手鏡に惹<br />
かれました。手に取って、しげしげと見つめ<br />
ていると、美子が言いました。<br />
「何?その古臭い手鏡は?」<br />
「うん。なんか、妙に惹かれるのよね」する<br />
と美子は気が知れないといった様子で、「え<br />
えー?何処がー?!」と言いながら、他のコー<br />
ナーへ行ってしまいました。<br />
手鏡は、お小遣いで買える値段でした。私<br />
は、この手鏡を購入することにしました。<br />
店を出ると、美子が、「ようこ、あの手鏡<br />
買ったの?」と、呆れ顔で、私に訪ねました。<br />
「うん。素敵でしょ」手鏡を包から出して、<br />
美子に見せました。美子は手鏡を手に取ると、<br />
「これがねー?」と言いながら、私に返しま<br />
した。<br />
友達と分かれ、家に帰り、部屋で手鏡を出<br />
して、見ました。見れば見るほど、素敵な手<br />
鏡に思えてきました。<br />
(もしかしたら、この手鏡は魔法の鏡か<br />
も?)と不意に思えてきました。鏡の中には、<br />
いつもの、代わり映えのしない、私の顔が写<br />
っています。(明日の運勢を占ってみようか<br />
しら?)<br />
「鏡よ鏡。明日の運勢はどうかしら?何かい<br />
い事が起こる?」と、鏡に向かって、言って<br />
みました。<br />
一瞬、鏡が曇って、私の顔が悲しそう顔に<br />
見えました。(あれ?こんな顔したっけ?) <br />
パチクリと瞬きをして、鏡を見ると、普段ど<br />
おりの私の顔です。<br />
「ご飯ですよー」と、お母さんの声が部屋<br />
の外から聞こえてきます。妙に違和感を覚え<br />
つつ、手鏡を置いて、部屋を出ると、もう、<br />
その事は忘れていました。<br />
翌日、晩ご飯の食卓で、お父さんが、「今<br />
日、会社で先日の健康診断の結果を渡されて<br />
ね。どうも、胃に陰りが写っているようなん<br />
だ。再検査に成ってしまったよ。ガンでなけ<br />
れば良いが」と、お母さんに言いました。<br />
お母さんも私も、とても心配になり、その<br />
日の晩ご飯は、少しも美味しくありませんで<br />
した。<br />
食事を終えて、部屋に戻ると、あの手鏡を<br />
取り出して、聴いてみました。<br />
「鏡よ鏡。お父さんのお腹は大丈夫な<br />
の?」すると、また、鏡は一瞬曇り、私の顔<br />
は笑顔になっていました。<br />
(あれ?こんな時に笑顔なんて出来ない<br />
よ? この鏡、おかしい?!私、笑った憶えな<br />
いわ)と思いながら、良く鏡を見てみると、<br />
怪訝そうな顔をした、私が写っています。<br />
数日して、お父さんの精密検査の結果が判<br />
りました。良性のポリープだったそうで、胃<br />
カメラで、その場で切除したそうです。<br />
お父さんが、なんとも無くて良かった。<br />
もしかして、あの手鏡は数日後の事が予測<br />
できる魔法の鏡かも?<br />
今度は、もっと大事な事を占ってみよう。<br />
数日後にバレンタインが控えています。吹<br />
奏楽部の部活動で、いつもお世話になってい<br />
る、憧れの山本先輩にチョコを渡そうか、止<br />
めようか、ここ数日、思い悩んでいます。<br />
手鏡に占って貰いましょう。<br />
「鏡よ鏡。山本先輩にチョコを渡しても、<br />
大丈夫?」<br />
すると、また、鏡は一瞬曇って、私の泣い<br />
ている顔が写りました。<br />
「やだ!何これ?」私は気味が悪くなって、<br />
鏡をベッドに頬り投げてしまいました。<br />
泣いている顔が写ったという事は、私は山<br />
本先輩にフラれるんだわ。やっぱり、山本先<br />
輩にチョコを渡すのは止めようと思いました。<br />
<br />
今日は、バレンタインデー。<br />
そして、授業も終わり、部活の時間になり<br />
ました。<br />
先日の鏡の結果が怖くて、山本先輩にチョ<br />
コを渡そうか、止めようか、躊躇していまし<br />
た。そうこうして居ると、山本先輩が、私に<br />
声を掛けてきました。<br />
「ようこちゃん、ちょっと、いいかな?部<br />
活が終わったら、調理室に来てくれない?渡<br />
したい物があるんだ」と、照れくさそうに、<br />
後頭部を掻いています。「はい。判りまし<br />
た」と返事はしたけど、私の心臓はドクンド<br />
クンと脈を打って、破れんばかりです。<br />
部活が終わって、調理室に行ってみると、<br />
山本先輩が待っていました。<br />
「はい。これ」と言って、先輩がリボンの<br />
付いた赤い包を私に差し出しました。<br />
(もしかして、チョコレート?逆チョ<br />
コ?)包を受け取った私は、嬉しさのあまり、<br />
泣いてしまいました。<br />
山本先輩は、そんな私を見て、慌てて、<br />
「ようこちゃん、どうしたの?泣かないで<br />
よ」と、心配そうに、気お使ってくれます。<br />
「先輩、ありがとうございます。私、嬉し<br />
くて……」その日は、山本先輩と一緒に、家<br />
族の事とか、部活の事とか、いろんな事を話<br />
しながら、帰りました。<br />
先日占った時の、あの、鏡に写っていた私<br />
の泣き顔は、嬉し泣きの顔だったのでした。<br />
それからというもの、私は肌身離さず、手<br />
鏡を持ち、何をするにも、まず、手鏡で占っ<br />
てから、行動するように成りました。<br />
ベッドから起き上がると、朝一番で、いつ<br />
もの様に手鏡で占ってみようと、鏡をかざし<br />
てみました。「鏡よ鏡。……」<br />
今日は、鏡が反応しません。<br />
(あれ?どうしたのかしら?鏡の力が無くな<br />
ったの?)何時も何時も鏡の力に頼っていた<br />
為、とても不安になりました。授業中も勉強<br />
に身が入りません。鏡は家に置いて来ました。<br />
と、そこへ、大地震が襲って来ました。初<br />
めは、いつもの地震かと思っていたら、だん<br />
だん大きくなり、今までに経験した事の無い<br />
揺れが、教室を襲いました。机の下に身を隠<br />
し、揺れが収まるのを待ちました。とても長<br />
い間揺れていました。揺れが少し収まると、<br />
私達は校庭に避難しました。<br />
間もなく、全校生徒は帰宅するように指示<br />
が出ました。<br />
家に帰ってみると、お母さんが、家の片付<br />
けをしていました。家の中は物が散乱し、惨<br />
憺たる有様でした。でも、お母さんが無事で<br />
良かった。<br />
二階の自分の部屋に入ってみると、やはり、<br />
物が棚から落ちて、散乱していました。あの<br />
手鏡も落下して、鏡が割れていました。<br />
(そうか。これが原因で、鏡は反応しなか<br />
ったんだわ)そう、納得すると、何かが、心<br />
の中で吹っ切れたような気がしました。<br />
後から、良く考えてみると、鏡が占ってく<br />
れたのでは無く、総ては自分自身の心の弱さ<br />
から来た、思い込みなのだと思えて来ました。<br />
震災前と後では、良かれ、悪しかれ、人々<br />
の心は確実に変わりました。<br />
これからは、強く生きなければと、思うこ<br />
の頃です。<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-17695417219661282682011-07-22T20:47:00.000+09:002011-07-22T20:47:58.503+09:00『田舎のバス』 『田舎のバス』<br />
<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
田舎のバス。なんとなく、風情があって、<br />
楽しそうな雰囲気がしますよね。<br />
子供の頃は塾通いで、よくバスを利用しま<br />
した。ある雨の日の夜、バス停でいつものよ<br />
うにバスを待っていました。<br />
バスに乗ると、乗客は誰もいません。<br />
そう。乗客は私一人なのです。バスの広い<br />
空間にポツンと乗客は私一人。田舎の為、道<br />
路の外には街頭などありません。全くの闇で<br />
す。<br />
途中、バスの停留所には誰もいません。<br />
バスは私一人を乗せて、闇の中を只ひたす<br />
ら疾走します。<br />
バスの中には運転手さんと乗客の私一人の<br />
み。運転手さんは一言も喋りません。黙々と<br />
運転します。<br />
窓の外の景色は漆黒の闇。<br />
ふと、このバスは、このまま、私の与り知<br />
らない遠い所へ行ってしまうのではないかと<br />
いう思いに囚われます。<br />
バスの走る軋み音と、雨の音。静まり返っ<br />
た車内。このまま、不気味な時間が永遠に続<br />
くのかという思いに囚われます。<br />
(もしかしたら、このバスは霊界へ通じる<br />
霊柩車?このまま、私は霊界へ連れ去られて<br />
しまうの?)<br />
相変わらず、運転手さんは一言も喋りませ<br />
ん。バスはしばらく、私一人を乗せて走って<br />
います。<br />
私一人を乗せた状態は、時間にして、数十<br />
分の事だったのかも知れません。しかし、私<br />
には永遠の時間に思われました。<br />
しばらく走っていると、ようやく、バス停<br />
留所に待っている人が現れました。バスは停<br />
車し、お客さんを載せました。<br />
(良かった、このバスは霊界バスじゃなか<br />
ったわ)<br />
やっと、安心しました。<br />
<br />
おわりようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-57711223619216825532011-07-18T19:57:00.000+09:002011-07-18T19:57:58.325+09:00『鴨の親子』『鴨の親子』<br />
<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
ここは水の都。茨城県は水戸にある千波湖<br />
の畔にある公園です。<br />
私達、鴨族はこの公園を寝城にしています。<br />
お隣りには、白鳥族もいます。その他、湖畔<br />
には、カモメ族など、いろいろな水鳥がいま<br />
す。<br />
今日は天気も良いので、生まれて間もない、<br />
子供達3匹を連れて公園の川に沿って、歩い<br />
てみますかね。<br />
「母ちゃん、お腹すいた」まだ、歩いて5分<br />
と経たないのに、年長の鴨一が不貞腐れた様<br />
子で言いました。<br />
「あたしも」「あたしも、お腹すいた」と子<br />
供達は言いながら、歩こうとしません。<br />
湖畔の畔にある餌場に行けば、ご飯は食べ<br />
られます。しかし、まだ、ご飯の時間ではあ<br />
りません。<br />
「我慢しなさい。まだ、お昼には成りません<br />
よ」<br />
「やだ。お腹すいたー」子供達は駄々をこね<br />
て歩こうとしません。<br />
ここで、甘やかしては、子供達のためには<br />
なりません。<br />
「だめです。さー、歩きなさい」<br />
子供たちは一歩も歩きません。<br />
そうこうしていると、向こうの方から、人<br />
間が近づいて来ました。<br />
(丁度良かった。人間が何か、食べ物をくれ<br />
るかも知れないわ)<br />
お母さん鴨は期待して待っていると、人間<br />
は私達の一メートル手前で止まりました。<br />
しばらく待ってみたけど、人間は食べ物を<br />
くれる様子がありません。<br />
(なんだ。見物か。あたし達は見世物じゃな<br />
いのよ)<br />
「さ。行くわよ」私は子供たちにそう言うと、<br />
細く流れている川に、入りました。私に続い<br />
て、3匹の小鴨達も、ぞろぞろと川に入りま<br />
した。<br />
人間はずっと、私達を見ています。<br />
(嫌ねー)私は、川をスイスイと泳ぎ、川の<br />
橋の下に隠れました。続いて、小鴨達も私に<br />
続いて、橋の下に隠れました。<br />
まだ、人間は私達を見ています。しばらく、<br />
橋の袂に隠れていると、人間は諦めたのか、<br />
向こうへ行ってしまいました。<br />
「食べ物をくれる良い人間もいるけど、私達<br />
に危害を加える悪い人間もいるから、人間を<br />
見たら、気をつけるのですよ」まだ、生まれ<br />
て間もない子供たちに、人間の事を教えまし<br />
た。「はーい」小鴨達は元気良く返事をしま<br />
した。 <br />
さてと、お昼の時間になったし、餌場に行<br />
ってご飯にしましょう。<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-23495684300036313482010-05-05T22:17:00.000+09:002010-05-05T22:17:21.917+09:00ターミネーターリング クロニクルズ 「ターミネーターリング クロニク<br />
ルズ」<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
<br />
『ようこ殺人計画』がことごとく失敗に終<br />
わり、スカイネットは焦っていた。<br />
どうすれば、ようこを確実に殺せるか?次<br />
なるスカイネットの作戦は、2010年のよ<br />
うこへ、3Dテレビを送りつけ、。そのテレビ<br />
を媒介にしてタイムトンネルを作り、そこへ<br />
刺客のターミネーターを送る事にした。<br />
<br />
ピンポーン。ピンポーン。<br />
「あら?誰かしら?」<br />
ようこは玄関口のチャイムに呼び出され、<br />
出てみると、宅配のお兄さんが大きな荷物を<br />
持って立っていた。<br />
宅配のお兄さんはテレビを玄関口に置くと、<br />
「ここへ、サインして下さい」と、伝票を差<br />
し出した。<br />
(え?こんな物、注文した憶えはないわ?<br />
何かの間違いかしら?)と思いながら、テレ<br />
ビを受け取ると、確かに、宛先は私になって<br />
いた。ダンボール箱を開けてみると、中に封<br />
筒が入っていた。<br />
「ようこ様。おめでとうございます。あなた<br />
はスカイネット懸賞に当選しました。つきま<br />
しては、27型3Dテレビ『ビエロ』と、3<br />
Dブルーレイディスク『タミちゃんリング』<br />
をお送り致します。今後もスカイネットを御<br />
引き立ての程、よろしく御願い申し上げま<br />
す」<br />
(こんな懸賞、応募した覚えは無いけど、タ<br />
ダで貰えるなら、まあいいか)と思って、テ<br />
レビを箱から出してみた。ブルーレイディス<br />
クまで付いている。3Dのソフトはまだ発売<br />
していないはずだけど、試供品かな?と思っ<br />
て見てみると、案の上、試供品みたいだ。<br />
リングのパロディ版のようだ。<br />
3Dテレビは3Dブルーレイプレーヤーと一<br />
体型になっていた。<br />
(すごい物、貰っちゃった)と喜び、早速、<br />
電源を入れて見た。<br />
同梱されているメガネを掛けて、ディスク<br />
を入れて見た。<br />
「すごい……」3Dの迫力に圧倒され、思わ<br />
ず呟いた。内容はといえば、どうもリングの<br />
ストーリーと似ている。後半のシーンになっ<br />
て、いよいよあの、名場面、貞子が井戸から<br />
出てくるシーンになった。<br />
しかし、井戸から出て来たのは、あのター<br />
ミネーターのロボットだった。そのロボット<br />
は、今にもテレビから抜け出てきそうだ。<br />
「きゃー!?怖い!!」ようこは思わず、テレビ<br />
の線をコンセントから抜いてしまった。<br />
「プツン」と音がして、テレビは真っ暗にな<br />
った。<br />
何か嫌なものを感じたようこは、テレビと<br />
ソフトをネットオークションに出してしまっ<br />
た。結構な値段で売れた。<br />
<br />
またもスカイネットの企みは失敗に終わっ<br />
た。やはり歴史は変えられない。スカイネッ<br />
トがウイルスに侵されるのも時間の問題のよ<br />
うだ。<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-80353905887681146002010-05-04T14:15:00.000+09:002010-05-04T14:15:44.868+09:00帰って来た隣のターミネーター クロニクルズ 「帰って来た隣のターミネーター <br />
クロニクルズ」<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
悪夢の電車内での鼻ク○事件から、早二年。<br />
ようこはターミネーターと遭遇していなか<br />
った。ターミネーターの事はすっかり忘れて<br />
いた。<br />
いつもの様に、ようこは通勤帰りの電車の<br />
中で文庫本を読んでいた。<br />
なにげに顔を上げて、向かいの席を見ると、<br />
40代半ばのオヤジがフライドポテトを食べ<br />
ている。(隣の席の人は迷惑だろうなあー)<br />
と思いながら本を読んでいると、今度は携帯<br />
をとり出して、大声で話している。<br />
(何なの、あのオヤジ)と思いながら、本を<br />
読んでいると、下車駅に着いたので、電車を<br />
降りた。<br />
向かいのオヤジも降りて、私の後をついて<br />
くる。<br />
駅から、暫く歩いて後ろを振り向いたら、<br />
あのオヤジが、後方10メートルくらいの所<br />
にいた。 <br />
周りに歩いている人は無く、私と、後方を<br />
歩くオヤジのみだ。私はだんだん怖くなって、<br />
歩くスピードを速めた。後ろを振り向くと、<br />
相変わらず、オヤジがついて来る。<br />
(間違い無い!あのオヤジ、私をつけてる!?<br />
ストーカーかしら?変質者?)<br />
私は怖くなって、走り出した。<br />
後ろを見ると、オヤジも駆け出した。<br />
私は全速力で駆けた。駅の近くの駐車場に<br />
停めている自家用車の中へ滑り込み、エンジ<br />
ンをかけようとすると、追い着いたオヤジは<br />
運転席側の車のウィンドーをトントンと叩い<br />
た。<br />
私は「キャー!?」っと悲鳴を上げ、エンジ<br />
ンキーを回した。【ブオン】とエンジンがか<br />
かった。オヤジは今度は激しく、ウィンドー<br />
を叩く。私は車を急発進させた。<br />
尚もオヤジは車を追いかけてくる。<br />
「何なのよー!!」車はスピードを上げ、時速<br />
70キロを超えている。が、しかし、オヤジ<br />
は車の後方にピタッと就きながら走っている。<br />
「人間じゃない?!」恐ろしくなり、急ブレー<br />
キを踏んだ。オヤジは急ブレーキの車のバン<br />
パーに当たり、体が宙を舞った。<br />
膝をがくがくしながら、車から降りて、道<br />
路に倒れているオヤジを見た。助けを呼ぼう<br />
にも、周りには誰もいない。<br />
不思議な事にオヤジは血を流していなかっ<br />
た。しかし、服の袖から、何か蒸気のような<br />
物をシュウシュウ出している。<br />
やがて、オヤジはシュウシュウと煙のよう<br />
な物を上げ始めた。その量がだんだん多くな<br />
ってくる。いまや、周りはモクモクと煙に覆<br />
われ、周りの視界も判然としなくなってきた。<br />
目をこらして、オヤジの倒れていた付近を<br />
見ると、オヤジが居ない。そこには、オヤジ<br />
が着ていた服のみが残っていた。<br />
ようこは悪い夢でも見ているのかと思って、<br />
頬をつねってみたけど、頬が痛い。紛れも無<br />
い現実だった。<br />
現実は小説よりも奇なり。<br />
ようこはフラフラとしながら、凹んだバン<br />
パーを見て、(この車の修理代は幾らかし<br />
ら?)と考えていた。<br />
<br />
<br />
スカイネットが送りこんだ刺客はまたも失<br />
敗した。このままでは、ウイルスが発生して<br />
しまう。スカイネットは焦っていた。<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
<br />
<br />
あとがき<br />
この物語はセカンドライフのお友達のミン<br />
さんが、リアルライフで遭った出来事を元に<br />
再構成しました。お話を使わせて頂きました。 <br />
ミンさん、ありがとうございました。<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-83043864353620482722010-05-01T20:51:00.000+09:002010-05-01T20:51:42.991+09:00隣のターミネーター クロニクル ズ「隣のターミネーター クロニクル<br />
ズ」<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
(ターミネーターのテーマ曲で)<br />
西暦2027年 人口知能が支配する社会。<br />
ここは、とあるサイボーグ生産工場の一室で<br />
ある。<br />
一体のサイボーグが手術台の上で寝ている。<br />
その手術台には無数の機械の触手が伸び、<br />
寝ているサイボーグの頭脳の辺りを修理して<br />
いた。<br />
<br />
<br />
人工知能スカイネットは西暦2010年の<br />
日本へ刺客のサイボーグを送りこんだ。<br />
その目的は、とある日本人の女を殺す事だ<br />
った。標的の女の名は「ようこ」。<br />
2010年の時点の「ようこ」はごくごく<br />
平凡な普通のプログラマーにすぎない。なぜ、<br />
スカイネットは、ようこに刺客を送ったか?<br />
それは、ようこが作った業務プログラムの<br />
一部のバグが、後のスカイネットにとっては、<br />
致命的なウイルスとなって作用する事が判明<br />
したからだ。<br />
このウイルスに感染したスカイネットは致<br />
命傷を帯び、その機能の大半を麻痺させた。<br />
そこで、スカイネットはこのウイルスの発<br />
生源である日本に刺客を送り、ウイルスの発<br />
生源を絶つことを決定した。<br />
ターミネーターに課せられた使命は、「2<br />
010年日本在住、プログラマー『ようこ』<br />
を抹殺せよ」<br />
<br />
ターミネーターは、「ようこ」が通勤に使<br />
用しているであろう、電車の車両に乗り、タ<br />
ーゲットを待った。<br />
ターゲットが隣に座っても、ターミネータ<br />
ーは気づかなかった。しきりに鼻をほじって<br />
いる。<br />
とうとう、ターミネーターは、その任務を<br />
遂行することが出来ず、タイムリミットと成<br />
り、西暦2027年へ戻って行った。<br />
<br />
スカイネットは任務を遂行することが出来<br />
ずに戻ってきたアンドロイドの頭脳からログ<br />
を取り出し、その詳細を調べた。<br />
全てのアンドロイドはスカイネットの制御<br />
下にあってアンテナ線が5本立っていた。し<br />
かし、時空を超えて任務に就いているアンド<br />
ロイドへは、そのアンテナ線が一本も立たな<br />
い。スタンドアロンで動かなくてはならない。<br />
ログを調べると、ターゲットが横に座って<br />
いるにも関わらず、このアンドロイドは鼻を<br />
ほじってばかりだ。完全に生産不良品だ。チ<br />
ップのどこかが逝かれているに違いない。<br />
スカイネットは次なるバージョンのアンド<br />
ロイドを2010年に送る事を決定した。<br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!! <br />
ダダンダン ダダンダンダンダン!!<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-73526208196190658172010-04-24T20:57:00.000+09:002010-04-24T20:57:46.253+09:00隣のターミネーター 隣のターミネーター<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
世の中には居るんですね、ターミネーター<br />
が。<br />
通勤電車でのこと、いつものように電車の<br />
ドア付近のシートに座りました。<br />
私は、通勤電車の中で読書をするのが、朝<br />
の小さな楽しみの一つです。<br />
シートに座ると、私は早速、鞄の中から文<br />
庫本を取り出し、読書に集中しました。<br />
すると、隣の男が、ごそごそと鞄の中から<br />
携帯を取り出し、見ています。<br />
私の横に座っているその男は、年の頃は二<br />
十代前半で、服装は私服の学生風で、メガネ<br />
をしている小太りの、おたく風男です。<br />
此処までは普通の光景なんですが、隣の男<br />
は携帯を見ながら、人差し指を立て、それを<br />
おもむろに自分の鼻の中へ持っていきました。<br />
(きゃっ!やだ!?汚い!何してんの?)<br />
私は見て見ぬふりをしながら、文庫本から<br />
目をそらし、男を見てみると、男は公衆の面<br />
前で平然と人差し指を鼻の中へ入れ、ぐりん<br />
ぐりんと回しています。<br />
(やだー。早く止めてよー)<br />
私は、その男の隣に座っていて、気が気で<br />
はありません。<br />
私の願いも空しく、男は携帯を見ながら、<br />
指のぐりんぐりんをいっこうに止めようとし<br />
ません。<br />
鼻から抜いた手の親指と人差し指で、物を<br />
丸め、弾丸を作り、それをシートの下に落と<br />
しています。<br />
(こいつ。きっと、異星人だわ。ロボットか<br />
も知れない。そうだ!ターミネーターだわ)<br />
私は隣の男をターミネーターと決め付けま<br />
した。<br />
ターミネーターは携帯を見ながら、その作<br />
業を延々と続けています。ターミネーターが<br />
放つ弾丸に当たったら、私は死んでしまいま<br />
す。<br />
私は心の中で、弾丸が私に当たりませんよ<br />
うにと、祈りながら本を読んでいます。<br />
「まもなく、○○駅。○○駅」車内の放送が<br />
あると、ターミネーターは先に電車を降りて<br />
いきました。男はシートを立ち上がる時に、<br />
「I’ll be back.」と言ったかどうかは定かではあり<br />
ません。私は、内心ほっとしました。朝から、<br />
気分が悪いものを見てしまいました。<br />
その時は、後日、再びターミネーターにあ<br />
いまみえるとは夢想だにしませんでした。<br />
<br />
数日して、ターミネーターのことはすっか<br />
り忘れていました。ところが、私は再び、あ<br />
のターミネーターに会ってしまったのです。<br />
私は電車の入り口付近の席に座ろうとして<br />
いると、突然、おじさんが、立ち上がって、<br />
空いている向かいの席に座り直しました。<br />
(?なんで、わざわざ、向かいの席に座り直<br />
すんだろう?)と思いながら、おじさんが座<br />
っていた、その空いた席に座ると、隣の男が<br />
鼻をほじっているではありませんか!?<br />
そうです、隣の男は、あのターミネーター<br />
だったのです。<br />
(わー!?最悪。隣の男は、ターミネーターだ<br />
わ!)<br />
他に空いている席も無いので私は仕方なく、<br />
その席に座っていました。<br />
ターミネーターの席の前のつり革に掴まっ<br />
て、立つ人は居ません。人々はターミネータ<br />
ーが放つ弾丸を避けているのでしょう。<br />
前回と同じ駅でターミネーターは降りてい<br />
きました。<br />
これに懲りた私は、あの電車の何輌目のド<br />
ア横のあの席はターミネーターの指定席だと<br />
解ったので、二度と近寄らないようにしてい<br />
ます。<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-79765789447314335172009-09-23T18:00:00.032+09:002009-09-23T18:32:55.164+09:00霊感修学旅行(8)最終回 <br />
床几に座っていた鳥居元忠が、ゆっくりと<br />
立ち上がりました。<br />
「皆の者。親方様の会津討伐の後方を三成に<br />
攻められてはならじと、ここまで防いできた<br />
が、もはやこれ迄。甲賀衆の裏切りにより、<br />
廓に火が放たれた。<br />
三成軍は、内堀のすぐそこ迄来ている。<br />
もはや、城が落ちるのは、ときの問題じゃ。<br />
城に残った者、僅か、三百余名。生き恥を<br />
晒すより、死して、親方様の御報恩に報いよ<br />
うぞ。<br />
あの笑止千万な治部少輔めに、三河武士の<br />
意地を見せてやろうぞ!」<br />
元忠は右手の拳を挙げて、えいえいおうっ<br />
と気勢を上げました。<br />
それに呼応するように臣下の者たちも立ち<br />
上がり、拳を挙げて気勢を放っています。<br />
茫然自失で、その様子を私達は見ていまし<br />
た。すると、私達をひっ捕らえてきた、脇の<br />
侍がすっと、腰の刀を抜きました。<br />
「おぬし達も観念せい!このわしが成仏させ<br />
てやるわ!」そういうと、私達、四人めがけ<br />
て切りつけて来ました。この時、夏子は侍に<br />
向けて、カメラのフラッシュを焚きました。<br />
「わぁ!」切りつけて来た侍と、背後の侍達<br />
が怯みました。<br />
「今よ!逃げるのよ!」夏子は脱兎のごとく、<br />
廊下を走り出しました。残る私達も夏子の後<br />
に続いて、走りました。<br />
「おのれ!面妖な!待て!」武士達が後方で<br />
騒いでいます。<br />
こう見えても、私達四人は陸上部なのです。<br />
足には自信があります。<br />
重い鎧甲冑を着ている侍達が、私達に追い<br />
ついてこれるはずもありません。<br />
走って本丸を出ると、間もなく外壁が見え<br />
て来ました。<br />
外壁の周りと入場門の周りは三成軍しかい<br />
ません。<br />
私達は、この混乱の中、身を隠すようにし<br />
て、門の出口まで来ました。<br />
「どうしよう。あそこに人がいっぱい居るよ<br />
う。あそこを通らないと、出られないよ~」<br />
幸江は泣きそうな顔でみんなを見ています。<br />
「何とかして、ここを脱出するのよ」<br />
由美子は悔しそうに唇を噛み、何か思案し<br />
ています。<br />
「本丸からやっと、此処まで来たけど、この<br />
先、更に二の丸、三の丸と抜けて行かないと、<br />
ここから出られないわ」夏子が、もう無理、<br />
と言った様子で、うな垂れました。<br />
「ちょっと、待って。私達、外に出ようとし<br />
ているけど、そもそも、私達の元居た場所は、<br />
あの和室よ!和室に戻りましょう。あそこが<br />
時空の穴になっているのよ」<br />
私はSF小説で読んだ、《時をかける少<br />
年》を思い出しました。<br />
「あそこに、時空の歪みがあるのよ。あの場<br />
所に戻りましょう。元の世界に戻れるかもし<br />
れないわ」<br />
このままでは、何万といる、三成軍をかわ<br />
して、城の外に出る事は不可能だと解った私<br />
達は、再び、あの和室に戻ることにしました。<br />
和室に戻ってみると、城内は静まり返って<br />
いました。もう既に、元忠達は自刃してしま<br />
ったのか?間もなく、ここにも、三成軍が押<br />
し寄せてくるはずです。<br />
和室には誰もいません。私達四人は手を取<br />
り合って、和室に入りました。すると、あの<br />
興聖寺の竜宮城のような門を潜った時の眩暈<br />
のような感覚に、再び襲われました。<br />
ふと、気づくと、私達四人は興聖寺の門の<br />
所に佇んでいました。<br />
「戻れたわ!」私が言うと、みんな、手に手<br />
を取り合って、喜びました。幸江は泣きなが<br />
ら、良かったね。よかったね。と、みんなに<br />
抱きついています。<br />
腕時計を見ると、あれから、三時間程経過<br />
しています。<br />
「いけない!早く戻らないと、先生に怒られ<br />
る!」<br />
急いで、宇治駅まで戻りました。もう、甘<br />
味処に行っている時間も余裕もありません。<br />
京都駅までの電車の中で、私達は先ほどの<br />
不思議な体験を思い出して、夢遊病患者のよ<br />
うにぼーっと座席に座っていました。<br />
この時、知らない人が私達を見たら、若年<br />
認知症の集団だと思ったことでしょう。<br />
なんとか、門限の時間までに間に合いそう<br />
です。京都駅に着いた私達は、宿までの道す<br />
がら、今日あった事は誰にも話さないで置こ<br />
うと言いました。<br />
こんな話を誰かに話したら、集団ヒステリ<br />
ーだとか、誇大妄想狂だとか思われるのが落<br />
ちです。下手したら、私達四人は精神病院に<br />
入れられてしまいます。そんなのは勘弁です。<br />
宿に着いた私達は、疲れがどっと出て来て、<br />
何事も無かったように振舞うのがやっとでし<br />
た。<br />
後は、鳥居元忠の亡霊が、再び私達のもと<br />
へ出て来ない事を、拙に祈るばかりです。<br />
<br />
<br />
おわり。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-64336876921366024152009-09-23T01:46:00.002+09:002009-09-23T01:46:18.721+09:00霊感修学旅行(7) 私達は、和室の外の様子を恐る恐る、見ま<br />
した。<br />
石田三成軍は内堀のすぐ近くまで来ている<br />
様子です。<br />
「ここは、伏見城の本丸だわ!」こんな事態<br />
なのに、歴史おたくの夏子は目を爛々と輝か<br />
せて喋りだしました。<br />
「伏見城は豊臣秀吉が築いた、巨郭よ。その<br />
守りは堅固で、難攻不落の城なのよ。<br />
城を守るのは鳥居元忠。その兵力、僅かに<br />
千八百人。対する石田三成軍は総勢四万人よ。<br />
その結果は火を見るより明らかだわ。<br />
でも、元忠はここを10日以上も持ち支え<br />
たのよ。<br />
敵は外ばかりではなく、内部にもいたの。<br />
それが、伏見城内にいた甲賀衆よ。<br />
甲賀衆は外に残して来た妻子を捕らえられ、<br />
内通しなければ、妻子を皆殺しにすると、脅<br />
されたのよ。<br />
内通した甲賀衆は伏見城内に火事を起こし<br />
たの。<br />
その為、伏見城の戦いによって、お城はそ<br />
の大半を消失しているわ」<br />
夏子が一挙に喋ると、みんなは、ふんふん<br />
と頷いているが、それどころじゃない。<br />
「そんなの聴いている場合じゃないわ。私達<br />
の命が危ないのよ。早くここを脱出しなきゃ、<br />
焼け死ぬか、鎧武者に切り殺されるわ!」<br />
「そうね。早く逃げましょう」夏子は現実を、<br />
やっと認識したようです。<br />
城壁の外の騒がしさに比べて、城内はやけ<br />
に静かでした。<br />
周りを見回しても、火の手が上がっている<br />
のに、人っ子一人いません。<br />
「これは、きっと、鳥居元忠以下の家臣は大<br />
広間に集まっているに違いないわ」<br />
夏子は深刻な表情でいいました。<br />
「え?!それじゃー、自殺の為に……」<br />
私の脳裏に、あの血天井の夥しい血の跡が<br />
蘇えりました。<br />
とんでも無い場面に遭遇したものです。<br />
四人とも、一様に膝が、がくがくと震えて<br />
います。<br />
と、そこへ、どやどやと、三~四人の武者<br />
が私達の方へ駆けて来ました。<br />
「お主達は何者だ!おのれ!裏切り者の甲賀<br />
衆か!?」先頭の男が言いました。<br />
「ち、違います!」私が言っても、その男は<br />
聞く耳を持ちません。目が血走っています。<br />
「この女子共をひっ捕らえよ!大広間に連れ<br />
ていくのだ!」男の言いなりに、私達は大広<br />
間へ連れて行かれました。<br />
大広間に着いてみると、そこには夥しい人<br />
数の城内の侍達が集まっていました。その数<br />
は、約三百名程。中には女子供も何人かいま<br />
す。<br />
昨夜見た、総大将の鳥居元忠以下、家臣の<br />
大将達が上座に並んで、甲冑のまま、椅子に<br />
座っています。<br />
(やばい!非常にやばい!これは、今まさに、<br />
自刃しようとする直前の現場だわ!)<br />
みんなも同じ気持ちか、皆それぞれ、その<br />
目は怯えています。<br />
<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-71347434021738928102009-09-22T15:08:00.002+09:002009-09-22T15:08:42.797+09:00霊感修学旅行(6) 朝、目覚めると、私は、布団の中で眠って<br />
いました。<br />
周りにクラスメートの由美子や、みんなも<br />
寝ています。<br />
(良かった。あれは、夢だったんだ)<br />
目が醒めて、牢屋の中じゃなかった事に、<br />
心底、安心しました。<br />
それにしても、妙にリアルな夢でした。<br />
夜中に起きた時に聞いた、誰かが歩く音は<br />
鎧武者が歩く音と同じでした。昨夜の夢と、<br />
何か関係がありそうです。<br />
<br />
旅館の食堂で、朝食を食べながら、昨夜の<br />
事を由美子や夏子、幸江に話しました。<br />
「昨夜ね。廊下で重い足音がしたんだけど。<br />
あれは、絶対、鎧武者の足音よ。間違いない。<br />
私、あの後、変な夢を見たのよ」<br />
「ようこに起こされて、トイレに付き合った<br />
んだけど。何も聞こえないし、誰もいなかっ<br />
たわよ。ようこ、寝ぼけていたんじゃない<br />
の?」由美子は私をからかうように言いなが<br />
ら、手前のたくあんを、お箸につまむと、ポ<br />
リポリと音をたてて食べています。<br />
「本当だって!あの後、すぐ寝たでしょ。そ<br />
れで、私、変な夢を見たのよ。妙にリアルな<br />
夢だったわ」<br />
「変な夢って、どんな夢?」味噌汁をすすり<br />
ながら、幸江がおっとりした様子で聞きまし<br />
た。<br />
「それがね。私は、和室のある一室にいるの。<br />
鎧甲冑を着た、戦国武将がどやどやと廊下を<br />
走ってくるのよ。その大将が鳥居元忠で、私<br />
は危うく、刀で切られるところだったの。そ<br />
れで、牢屋に入れられちゃったのよ」<br />
ここまで、一気に言うと、みんなは笑いだ<br />
しました。<br />
「あはは。ようこ。その夢、面白い」<br />
夏子は可笑しくてしょうがないといった様<br />
子で、テーブルを叩いています。<br />
「笑い事じゃーないのよ。妙にリアルだった<br />
んだから。もしかしたら、私、タイムスリッ<br />
プしたのかも?」<br />
「そんな訳ないじゃん。あはは」夏子は腹の<br />
皮が捩れるーといって、お腹を抱えて笑って<br />
います。<br />
「本当だってばー」私が真面目に言えばいう<br />
程、みんなは笑います。<br />
「もういいよ!信じて貰えなくても!」私が<br />
頬をぷーっと膨らませていうと、みんなの笑<br />
いはやっと止まりました。<br />
「ようこ。思い入れが激しいから、そんな夢<br />
見るんだよ。もっと、気楽に行こうよ」と由<br />
美子は私の横で、肩をポンと叩きました。<br />
「今日さぁ~。興聖寺に行くの、よそうよ。<br />
宇治の甘味処だけ、行こうよ~」<br />
私がいうと、夏子はとんでもないという様<br />
子で、「だめ!最後のコースなんだから、絶<br />
対、見なくちゃ、だめよ」と、お箸を持った<br />
まま、手を横に振っています。<br />
「どうなっても、知らないから!」私は怒っ<br />
ていうと、みんなは、まじ?という様子で私<br />
を見ました。<br />
「大丈夫よ。何も起きないわよ。最後の日程<br />
なんだから、気楽に行こうよ。ね?」<br />
由美子が私をなだめると、それ以上、私は<br />
何も言えなくなって、しぶしぶ了承しました。<br />
<br />
朝食を終えた私達四人は、旅館のロビーに<br />
集合すると、今日の日程を確かめました。<br />
夏子が地図を広げて、興聖寺の場所はここ<br />
よと指し示しました。<br />
電車で、京都駅から宇治駅まで、三十分程<br />
です。さらに、宇治駅から歩いて、三十分程<br />
の所に興聖寺はあります。コースとしては、<br />
興聖寺に見学に行った後、駅周辺の甘味処に<br />
行く予定です。<br />
「さあ。今日も元気に行ってみよー!」と夏<br />
子は右手の拳を振り上げました。<br />
私は、何も起きなければ良いがと、気乗り<br />
のしないまま、みんなの後を付いて京都駅ま<br />
で歩いて行きました。<br />
<br />
程なく、宇治駅に着くと、地図を見ながら、<br />
川沿いの道を歩いて、やっとの事で、一行は<br />
興聖寺の入り口の古びた門に着きました。<br />
「夏子、ここ遠いじゃん」幸江はへなへなと<br />
川べりの堤防に寄りかかりました。<br />
「ちょっと、遠いわねえ」夏子も疲れた様子<br />
でいうと、「もう直ぐよ。さぁ。ファイト」<br />
といって、興聖寺の参道を歩いて行きました。<br />
<br />
まもなく、竜宮城のような門が見えて来ま<br />
した。そこから、本堂の中に入り、血天井を<br />
見学しました。ここにも、シミのある天井板<br />
に、人間の手の跡や、足の跡が付いています。<br />
夏子はここでも、パチパチと写真を撮って<br />
います。<br />
今回は、時間も無いので、早々に本堂を出<br />
て、帰りました。<br />
帰りに、私達四人で、竜宮城のような門を<br />
くぐる時に、異変を感じました。<br />
何か目が廻るような感じになって、ふと、<br />
気づくと、私達四人は、見たことのある、和<br />
室の一室に居ました。<br />
「あれ?ここ何処?」夏子はきょとんとして<br />
います。みんなも一様に何が起きたのか解ら<br />
なく、茫然としています。<br />
ここは、紛れも無い、夢で見た、あの和室<br />
の所です。私は驚きで、一言も喋れません。<br />
あの悪夢が再び、現実となったのです。し<br />
かも、今回は友達も一緒です。<br />
「あわわわ。ここ。ここよ。私が夢に見たの<br />
は!」私は、必死にみんなに説明しました。<br />
「ええーー!?」由美子も夏子も幸江も、目玉<br />
が飛び出しそうな勢いで驚いています。<br />
「これは夢じゃ無いのよ!現実なのよ!ここ<br />
は鳥居元忠達が自刃した伏見城の中なの<br />
よ!」<br />
「何でそんな事が起きるの!在りえない<br />
わ!」由美子がいうと、「そうよそうよ」と、<br />
他の二人も追随しました。<br />
「とにかく、現実にこうして、起きているん<br />
だから、仕方ないじゃん」私は途方に暮れて<br />
言いました。<br />
<br />
お城の外から、「わぁわぁ」と人の怒号が<br />
聞こえてきます。お城のあちこちで火災が発<br />
生しているようです。<br />
事態は私が昨夜、見た時よりも更に悪くな<br />
っているようでした。<br />
<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-25495910647670879562009-09-22T11:33:00.002+09:002009-09-22T11:33:27.182+09:00霊感修学旅行(5) 一日にお寺を三箇所も廻ったので、私は疲<br />
れて、早々に寝てしまいました。<br />
夜中に、トイレへ行きたくて、目が醒めま<br />
した。普段は朝まで起きないのですが、寝る<br />
前にみんなと話ながら、ジュースをがぶ飲み<br />
したのがいけなかったようです。<br />
布団から、上半身だけ起き上がると、廊下<br />
の方から、誰かが歩いているような、重い、<br />
軋む音が聞こえました。<br />
何か、がちゃがちゃとした音も聞こえます。<br />
昼間の事もあり、怖くなった私は隣で寝て<br />
いる由美子を揺り起こしました。<br />
「ねぇ。由美子~。由美子ってばー」<br />
由美子は、うーんと唸って、なかなか起き<br />
ようとしません。<br />
「何よー。どうしたの?」やっと、由美子は<br />
目が醒めたようです。<br />
「あのね。廊下の方から音がするの。誰かい<br />
るのかなぁ?」由美子は枕元の腕時計を見て、<br />
「こんな、夜中に誰か起きてるの?」と、目<br />
をこすっています。<br />
「なんかね。重い足音が聞こえたんだけど」<br />
「足音って?」<br />
「うん。なんか、がちゃがちゃと音がして、<br />
誰かが、部屋の外の廊下を歩いている音がし<br />
たんだけど……」<br />
「ええー!? ほんとに?夢でも見たんじゃない<br />
の?」<br />
ここまで聞いて、やっと、由美子は理解し<br />
たらしい。<br />
「そんな事、無いって。あたし、トイレに行<br />
きたくて、目が醒めたら、聞こえたんだか<br />
ら」と、私がいうと、「ほんとにー?」とい<br />
っている由美子の腕に鳥肌が立っているのが<br />
見えました。<br />
「ねぇ。怖いよー。どうしよー。あたし、ト<br />
イレ行きたいんだけど。由美子、一緒に行こ<br />
うよー」<br />
「しょうが無いわねー。小学生じゃないんだ<br />
から。じゃー、一緒に行ってあげるよ」<br />
二人は、こわごわと部屋の襖を開けて、部<br />
屋の外の廊下に出てみると、そこには、もち<br />
ろん、誰もいませんでした。<br />
「ほらー。誰もいないじゃん」<br />
「本当に、さっきは音がしたんだってば!」<br />
私は半ば、やけくそ気味に言うと、「はい。<br />
はい。わかりました」と、由美子にはぜん<br />
ぜん取り合って貰えませんでした。<br />
トイレから部屋に戻ると、由美子も私もす<br />
ぐに布団を被って、また寝てしまいました。<br />
布団の中で、あの音は何だったのだろう?<br />
と、釈然としない気持ちのまま、再び、眠り<br />
に落ちました。<br />
<br />
(あれ?ここは何処?)<br />
私はいつの間にか、和室の一室にいます。<br />
周りにはクラスメートが、一人も居ません。<br />
襖を開け、廊下に出てみると、そこは、泊<br />
まっている旅館の廊下と全然違います。<br />
廊下の向こうから、どやどやと人の集団が<br />
走ってくるのが見えました。<br />
それを見た私の心臓は口から飛び出しそう<br />
になりました。<br />
なんと、その集団は鎧甲冑を着ている武士<br />
の集団でした。<br />
(え!?何?何が起きたの?)<br />
これは夢だと思いました。しかし、凄くリ<br />
アルな夢なのです。<br />
武士の集団はどんどん、こちらに近づいて<br />
きます。やがて、武士の集団の先頭を走る男<br />
が、佇んでいる私を発見したようです。<br />
集団は一旦、立ち止まり、私の出で立ちを<br />
見て、向こうも驚いているようです。<br />
集団の頭らしき、先頭の男が一人、こちら<br />
に歩いて来ました。<br />
私は、足ががくがくして、一歩も歩けませ<br />
ん。鎧武者が間近に迫りました。<br />
「そこの女。面妖な。何だ、その、斬ばら髪<br />
は! なんだ、その着物は!敵の間者か!」<br />
佇んでいる私に向かって、鎧武者は言いま<br />
した。<br />
「あの。あの……」私は言葉が出ません。<br />
「ぬぬ。怪しい奴。このわしが叩き切ってや<br />
る!」鎧武者は腰の刀を抜くと、私に切りつ<br />
けて来ました。<br />
咄嗟に私は言いました。<br />
「鳥居さん!ごめんなさい!」<br />
「何?なんで、わしの名前を知っている?ま<br />
すます怪しい奴。なんで、わしの名前を知っ<br />
ているんだ?」<br />
咄嗟に私の口から出た言葉が、鳥居だった<br />
のには、私自身も驚きましたが、向かいの相<br />
手の姓は鳥居だったようです。<br />
(もしかして、前にいる男は鳥居元忠?まさ<br />
かね)<br />
「あのう。鳥居元忠さんですか?」<br />
私がおずおずと聞くと、「いかにも、拙者<br />
は鳥居元忠だ」と、鎧武者は答えました。<br />
(ええー!?何これ?夢?)<br />
「そちは、何者だ?」と、鳥居元忠が聞くの<br />
で、私は正直に答えました。<br />
「○○高校。三年二組のようこです」<br />
「何?今、なんと言った?益々、面妖な」<br />
(しまった。まずい)<br />
「あ。あたしは桂村のようこです」<br />
出鱈目をいうと、鳥居元忠はそんな村あっ<br />
たか?という表情で言いました。<br />
「まあ。良い。女こどもを切るのは偲びない<br />
ので、お主は牢屋に入って貰うぞ」そういっ<br />
て、鳥居元忠は部下に命ずると、先に行って<br />
しまいました。<br />
「ああー。ちょっと、待って下さいよー」私<br />
の言葉も空しく、既に鳥居元忠には届かなか<br />
ったようです。<br />
私は部下に捕まり、牢屋まで連れていかれ、<br />
座敷牢のような処に入れられてしまいました。<br />
(まずい。非常にまずい。ここは戦国時代。<br />
しかも、鳥居元忠が自刃する前の伏見城)<br />
牢屋に入れられた私は、早く夢から醒めな<br />
いかな、と思いながら、泣きながら寝てしま<br />
いました。<br />
<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-3273207765469889102009-09-21T20:01:00.001+09:002009-09-21T20:03:18.072+09:00霊感修学旅行(4) 夏子だけは例外で、目を輝かせて、お坊さ<br />
んの説明を聞いていました。<br />
「夏子さぁ~。怖くないの?」<br />
由美子は呆れた顔で夏子に聞きました。<br />
「ぜんぜん。あたし、これ、ずっと見たかっ<br />
たんだ」<br />
「気が知れないわ」由美子は相手にできない<br />
といった様子で、すたすたと先を歩いて行き<br />
ました。<br />
「ああ。待ってよー。もっと、じっくり見よ<br />
うよー」夏子は由美子の後を追って行きまし<br />
た。<br />
「あ、由美子。私も行くー」<br />
残された私と幸江も由美子の後を追いまし<br />
た。<br />
養源院を出た私達は、次の目的地の正伝寺<br />
に向かう予定です。<br />
しかし、実際に血天井を見てしまい、これ<br />
は実際に在った事なのだと思うと、背筋がぞ<br />
くぞくして、私は気乗りがしませんでした。<br />
「ねえー。次、行くのー?これで止めて、ど<br />
こか、甘い物でも食べに行こうよー」私がい<br />
うと、夏子は手を横に振って、「何言ってる<br />
の?だめだめ。予定通り、全部見るの!学校<br />
にも、予定表、提出してるでしょ」<br />
「だってー。怖いんだもん」<br />
私は泣きそうな顔でいうと、幸江も由美子<br />
も、うんうんと頷いている。<br />
「何、言ってるの。怖い事なんて、なんも無<br />
いよ。さ、行こう」といって、またもや、先<br />
をずんずんと歩いて行きます。<br />
門を出て、タクシーを捕まえた私達は、次<br />
の目的地の正伝寺に向かいました。<br />
<br />
正伝寺に着いた私達は綺麗な庭園を見た後、<br />
本堂の廊下にある血天井を見学しました。<br />
やはり、ここの天井にも、赤茶けた、おび<br />
ただしい血のシミ跡が付いています。<br />
「怖いよう。ね、ね。早く行こう」<br />
私は、熱心に見ている夏子を促して、お堂<br />
を出ました。<br />
<br />
後から解った事なのですが。近年の目覚し<br />
い、血液学の発展によって、ここの天井を分<br />
析した結果、シミは紛れも無く、人間の血液<br />
だと判明したそうです。<br />
<br />
「次、行くわよ」夏子がいうと、「ねー、や<br />
っぱ、止めようよー」私は夏子の袖を引っ張<br />
りながら、駄々をこねました。<br />
「今日は、あと一つだから」といって、夏子<br />
はタクシーを呼ぶため、お寺の受付の所に行<br />
ってしまいました。<br />
程なく、タクシーが来て、今日の最後の源<br />
光庵に向かいました。源光庵は正伝寺から近<br />
い所にあり、7~8分で着きました。<br />
当然ながら、ここも、お堂の廊下の天井は<br />
血天井です。中には、人間の足跡がくっきり<br />
と付いている箇所もあります。<br />
「ひー。あ、あれ。人間の足跡」私が天井を<br />
指さすと、みんな、一斉にその方向を見まし<br />
た。<br />
「本当だ!?」幸江と由美子はそれを見て、引<br />
いています。<br />
夏子だけは、平気な顔をして見ています。<br />
あろうことか、夏子はカメラを取り出して、<br />
写真を撮ろうとしています。<br />
「止めなさいよ。夏子」私が止めると、「何<br />
で?」と惚けた顔をしています。<br />
「なんか、写っていたら、怖いじゃん」<br />
「何が?」<br />
「何がって。心霊写真――」<br />
「あはは。大丈夫よ。そんなの写る訳ないじ<br />
ゃん」夏子は豪快に笑うと、私が止めるのも<br />
聞かず、パチパチと天井の写真を撮りました。<br />
<br />
見学を終わった私達はタクシーを呼び、宿<br />
に近い所で降りて、お蕎麦屋さんで食事をし<br />
ました。<br />
「ねえ。明日も行くの?」私が夏子に聞くと、<br />
当然といった顔で、「当然よ。明日は宇治市<br />
にある興聖寺よ。見学した後、駅の近くの甘<br />
味処に行きましょ。老舗のお店で、抹茶アイ<br />
スとか、宇治金時とかあるのよ」<br />
他の二人は、宇治の甘味処に行くのは、賛<br />
成だったけど、興聖寺はあまり、気乗りがし<br />
ないようでした。<br />
<br />
宿に戻って、その夜。私は恐ろしい夢を見<br />
ました。<br />
<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-19839935558168261692009-09-19T23:26:00.005+09:002009-09-21T22:17:34.461+09:00霊感修学旅行(3) ・・・<br />
<br />
修学旅行の初日、私達三年二組の一行は宿<br />
に着きました。<br />
翌日は、先生から、宿へは五時までに戻っ<br />
てくるようにと言われ、いよいよ、プラン通<br />
りに行動することになりました。<br />
宿は京都駅から程近い所にあります。まず<br />
はプランに沿って、一番近い所にある養源院<br />
から見て廻ることになっています。<br />
「じゃー、養源院にレッツゴー!」<br />
夏子が嬉々として地図を片手に歩き出しま<br />
した。<br />
「ええと。ここの場所はここだから……。こ<br />
っちよ」夏子は大股で肩で風を切って、四人<br />
の先頭に立って歩いて行きます。<br />
「ちょっと待ってよー」<br />
私達三人は回りをきょろきょろと見回しな<br />
がら、先頭を歩く夏子について行くのがやっ<br />
とでした。<br />
「こっちよ!」三十三間堂前に着いた私達は<br />
夏子の指し示す門の中に入って行きました。<br />
養源院に着いた私達は、早速、お堂の中に<br />
入り、本堂廊下にある血天井を見学しました。<br />
天井はシミだらけで、いかにも血の跡のよ<br />
うに見えます。お坊さんが、長い竹竿で、こ<br />
こが頭で、ここが手とか、指し示して、説明<br />
しています。「きゃっ!あそこに人間の手の<br />
跡が!」幸江が口に手を当てて、天井の一角<br />
を指さしています。確かにそこは、人間の手<br />
の跡のように、生々しく見えます。<br />
夏子から、事前に聞いていた話を思い出す<br />
と、ぞくぞくしました。<br />
鳥居元忠とその家臣達が私達の背後に居る<br />
ような気がして、思わず私は背後を振り返っ<br />
てしまいました。勿論、そこには、私達の後<br />
ろに続く、観光客しか居ませんが、背筋がぞ<br />
くぞくします。昔から、霊に感応しやすい体<br />
質の私は、この時、ここに来てしまった事を、<br />
少し後悔しました。<br />
そして、子供の頃を思い出しました。<br />
あれは、私が幼稚園生の時でした。私の家<br />
は海岸に近い所にありました。近所のお友達<br />
の哲也君が面白い物があるから、見に行こう<br />
というので、家からちょっと離れた所にある<br />
砂丘の所に行きました。<br />
哲也君は砂丘に着くと、「ここだよ」とい<br />
って、砂丘の一角を指さしました。<br />
よく見ると、砂場のあちこちの表面に円錐<br />
形の凹みがあります。<br />
「よく見てろよ」と哲也君はいうと、近くを<br />
歩いている蟻を捕まえて、その円錐形へ落と<br />
しました。蟻は一生懸命、円錐形の所から這<br />
い上がろうとしますが、砂が落ちて滑って、<br />
上がれません。すると、円錐形の底の方から、<br />
二本の爪のような物が出てきて、蟻を捕まえ<br />
てしまいました。蟻はもがくけど、がっちり<br />
と捕まえた爪は蟻を逃しません。<br />
やがて、蟻は砂の中に曳きづり込まれてし<br />
まいました。<br />
その様子を、驚いて見ている私に、哲也君<br />
は自慢げに「これはな。蟻地獄っていうん<br />
だ」と教えてくれました。<br />
そして、蟻を捕まえては、蟻地獄に落とし<br />
ました。私も、蟻を捕まえて、落としてみま<br />
した。残酷な気持ちが子供心に沸きました。<br />
哲也君は円錐形の砂の底から、小さな虫を<br />
ほじり出しました。<br />
「これが、蟻地獄だよ」といって、手の平に<br />
載せて、見せてくれました。3ミリ程の小さ<br />
な虫はお尻を使って、一生懸命、砂の中にも<br />
ぐろうとしていますが、そこは人間の手の平<br />
の上です。潜れません。<br />
「ほれ、ようこも持ってみろ」といって哲也<br />
君は私の手の平に蟻地獄を載せました。<br />
蟻地獄のお尻が、もぞもぞと手の平をほじ<br />
るので、とても、くすぐったかった思い出が<br />
あります。<br />
私は「いやっ!?」といって、蟻地獄を放り<br />
ました。 <br />
その夜、私は恐ろしい夢を見ました。<br />
蟻と蟻地獄が私の枕元に立って、恨めしそ<br />
うに、私を見ているのです。枕元に立ってい<br />
る蟻と蟻地獄はとても大きいのです。人間の<br />
子供位の大きさがありました。しかも、蟻も<br />
蟻地獄も、どういう訳か、虫のくせに、しっ<br />
かり、二本足で私の枕元に立っているのです。<br />
私は「蟻さん、蟻地獄さん、ごめんなさ<br />
い」と言って、布団を頭から被って震えてい<br />
ました。少し経って、そっと、布団の中から<br />
顔を出して、枕元を見てみると、そこには、<br />
もう、蟻も蟻地獄も居ませんでした。<br />
今でも、妙にリアルに思い出されます。<br />
あれは、虫の霊が出てきたものと、今でも<br />
思っています。<br />
ふと、我に返って、みんなを見回すと、夏<br />
子を除いて、みんな一様に、気味の悪そうな<br />
顔をしています。<br />
夏子だけは例外で、目を輝かせて、お坊さん<br />
の説明を聞いていました。<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-39082508205461538032009-09-19T14:50:00.000+09:002009-09-19T14:50:05.897+09:00霊感修学旅行(2)「血天井っていうのはねぇ。あるお寺さんに<br />
ある天井板の事なの。その天井板には足跡と<br />
か、手の跡とかのシミが付いているのよ」<br />
「なぁんだ、シミか。つまんないの。で、そ<br />
のシミを見に行きたい訳?」由美子が呆れた<br />
ようにいうと、夏子はむっとしたように「そ<br />
れが、普通のシミじゃ無いのよ。このシミは<br />
人間の血で出来たものなの。戦国武将の血<br />
よ」といった。<br />
「へー。なんで、戦国武将の血が天井に付い<br />
ているの?」由美子は興味が沸いてきた様子<br />
でした。<br />
みんなは興味深そうに夏子の話を聞いた。<br />
「時は戦国時代。豊臣秀吉が天下を統一し、<br />
平和な時代がやって来たように見えたけど、<br />
秀吉の死後、勢力は徳川家康率いる東軍と石<br />
田光成率いる西軍に真っ二つに分れて、関ヶ<br />
原の合戦になった事はみんなも知っているわ<br />
ね」<br />
夏子がいうと、みんなはうんうんと首を縦<br />
に振った。<br />
「この関ヶ原の合戦の前哨戦になったのが、<br />
『伏見城の戦い』なの。関ヶ原の戦いの直前<br />
に、家康は上杉景勝討伐に向かったの。それ<br />
で、城のお留守番役として、鳥居元忠以下、<br />
二千名程で伏見城を守ることになったのよ。<br />
みんなは、鳥居元忠を知らないわね」<br />
みんな、うんうんと頷く。<br />
「鳥居元忠という武将は家康が今川の人質と<br />
なっていた、子供の頃からの側近の一人なの<br />
よ。元忠は家康の絶対の忠臣と言われている<br />
わ」みんな、ほおほおと頷く。<br />
「お話を戻すとね。家康が上杉討伐に京を出<br />
立すると、これを待ち構えていた石田三成の<br />
軍勢九万が伏見城を攻撃したのよ」<br />
みんなはうんうんと頷いている。<br />
「鳥居元忠とその部下は三成軍を少しでも長<br />
く京に留まらせ、会津まで援軍に行かせない<br />
ようにと奮戦したのだけど、遂に力尽きて、<br />
落城する際に、鳥居元忠以下380名以上が<br />
自刃したと言われているの。そして、元忠達<br />
の遺骸は関ヶ原の合戦が終わる迄の2ヶ月も<br />
の間、伏見城に放置されていたの」<br />
「ええー?!二ヶ月も?」幸江が気持ち悪そう<br />
に、顔をしかめて聞いた。<br />
「そうなの。遺体からの血痕や顔や鎧のあと<br />
が縁側の板に染み付き、いくら拭いても洗っ<br />
ても落ちなくなったといわれているのよ。そ<br />
れで、血の付いた廊下の板は自刃した武士た<br />
ちを弔う意味で、お寺の天井板にはめ込んだ<br />
のよ。この床板は五つのお寺に分けて、天井<br />
板として供養されているの。<br />
そのお寺が京都にある、正伝寺 源光庵 <br />
養源院 宝泉院 興聖寺というお寺で、血天<br />
井として、供養されているのよ」<br />
あまりの夏子の歴史おたくぶりにみんなは<br />
「へー」という顔で夏子を見た。<br />
「で、その血天井巡りをしたい訳?夏子は」<br />
由美子がやれやれと、両手の平を上に向け<br />
て開いた。<br />
「そうなの。だめ?」夏子が探るようにみん<br />
なを見回した。<br />
「そうねぇ。なんとなく、興味が沸いてきた<br />
わね。行ってみる?」私がいうと、夏子は行<br />
こうよ、行こうよと、みんなを説得した。<br />
「血天井巡りだけじゃ、つまんないから、一<br />
緒に、甘味所巡りもしようよ」由美子がいう<br />
と、みんなは一も二も無く賛成した。<br />
こうして、血天井巡りが決定し、巡る順番<br />
と日程を決めました。<br />
京都での自由行動は二日間あるので、日程<br />
初日は、養源院→正伝寺→源光庵→宿として、<br />
二日目は、興聖寺→甘味所巡り、とした。<br />
残りの一つの宝泉院は遠いので、今回は外<br />
しました。<br />
日程表を作成し、学校へ提出し、これで、<br />
私達の血天井巡りは、準備万端です。<br />
<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-10649072708323944432009-09-13T23:12:00.003+09:002009-09-13T23:23:28.404+09:00霊感修学旅行(1) 霊感修学旅行<br />
<br />
ようこ( ̄ー ̄)v<br />
<br />
この物語はフィクションです。物語に登場<br />
する人物及び団体は架空のものです。実在の<br />
人物および団体とは一切関係ありません。<br />
<br />
みなさん、こんにちは。今回は私が修学旅<br />
行に行った時のお話をしてみたいと思います。<br />
<br />
今では修学旅行先に海外も珍しくないよう<br />
ですが、関東では、私が高校生の頃の修学旅<br />
行先といえば、京都・奈良方面が多かったと<br />
おもいます。<br />
私たちの学校もご多聞に洩れず、修学旅行<br />
先は京都・奈良方面でした。<br />
ホームルームの時間に、担任の沼田先生が<br />
修学旅行について話ました。京都で二泊し、<br />
その後、広島へ行って、原爆記念館を見てく<br />
るそうです。京都ではグループ単位に自由行<br />
動で、行動計画書を提出する事になりました。<br />
今では修学旅行で、グループ単位の行動は<br />
珍しくないようですが、私たちの頃は団体行<br />
動が主流だったので、その頃にしてはめずら<br />
しい部類だったとおもいます。<br />
早速、クラスで、普段から仲が良い、由美<br />
子、夏子、幸江と私の四人が集まり、グルー<br />
プを作りました。<br />
四人は休み時間になると、いつもつるんで<br />
行動をしていました。<br />
由美子は行動派の子で、何事も進んで物事<br />
を進めるタイプで、クラスでも、リーダー的<br />
存在の子でした。<br />
夏子は、ちょっと、お調子者で、歴史おた<br />
く。<br />
幸江は優柔不断でおっとりとした子でした。<br />
今回の修学旅行先が京都・奈良という事で<br />
一番喜んでいたのは歴史おたくの夏子でした。<br />
来週のホームルームまでに、それぞれ、何<br />
をしたいか考えて来ることになりました。<br />
<br />
・・・<br />
<br />
次のホームルームが来て、四人集まって、<br />
ああでもない、こうでもないと行動計画を練<br />
っていると、夏子が突然みんなに向かって言<br />
いました。<br />
「ねえねえ。血天井って知ってる?」<br />
それまで、わいわいがやがやと騒々しく話<br />
していた私達は、(何を言っているの?この<br />
子は?)という顔で唖然と夏子の顔を見まし<br />
た。<br />
「今、何て言ったの?」と由美子が眉をしか<br />
めていうと、「血天井……。」と夏子は罰が悪<br />
そうに俯きながら爪をいじっています。<br />
「何それ?気味悪い」と、幸江が恐ろしそう<br />
に聞きました。<br />
「血天井、知らないの?」と夏子が得意気に<br />
言うと、みんな一斉に「そんな物、知らない<br />
わよ!」と言いました。<br />
夏子はここぞとばかりに歴史おたくの血が<br />
騒ぐようで、血天井の説明を熱く語りだしま<br />
した。<br />
<br />
つづくようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-4174526770916452942009-09-09T21:59:00.000+09:002009-09-09T22:00:49.965+09:00たっくんの完全なる飼育(15)最終回 後日、理恵は信君の車に乗って、ようこの<br />マンションの前まで行った。<br /> ようこが出てくるまで、車の中で、張り込<br />みをしてみる事にした。<br /><br /> ・・・<br /><br />「ちょっと、あんたさぁ。お昼のご飯、買っ<br />てきてくんない?」<br /> ようこは風邪をひいてベッドに横になった<br />まま、竹部に云った。<br />「ああ、良いよ。夜のご飯は僕が作るから」<br /> 今では竹部は手錠も足縄もされていなかっ<br />た。竹部はもはや、逃げようとはしなく成っ<br />ていた。<br /> ようこが、風邪で倒れてから、竹部が、よ<br />うこの看病をし、炊事洗濯などをしていた。<br /> 今では、すっかり、普通の夫婦のような生<br />活をしていた。<br />「じゃ、行ってくるね」<br /> そう云うと、竹部は玄関の鍵を開けて、出<br />掛けて行った。<br /> <br /> ・・・<br /><br /> 理恵達は車の中でしばらく、マンションの<br />入り口を見張っていた。<br /> 時間はお昼近くになっていた。<br /> 諦めて、食事に行こうかと思った矢先に、<br />マンションから、たっくんらしき、人物が出<br />てくるのを発見した。<br />「信君。ね、あれ、たっくんじゃ無い?」<br /> 幾分、痩せ細ってはいるが、マンションか<br />ら出てくる人物は間違いなくたっくんだった。<br /> 理恵と信は車から出ると、急いで、たっく<br />んの所まで、走り寄った。<br />「竹部!おい!俺だ!」<br /> 信が声をかけると、たっくんは立ち止まっ<br />た。<br /> たっくんは、はっとした様な顔をしている。<br />「おい。竹部。お前、無事だったんだな。さ、<br />帰ろう」<br /> 信君がたっくんの腕を掴むと、たっくんは<br />それを振り払った。<br />「よしてくれ。僕は何処へも帰らない。ここ<br />が僕の家だからね」と、たっくんは今出て来<br />たマンションを振り返って云った。<br />「どうしたんだ?俺たちが、どれだけ、お前<br />の事を心配したか。実家のおふくろさんも悲<br />しんでるぞ」<br />「そうよ、たっくん。ね?帰りましょう」と理恵<br />は云ったが、たっくんは聞く耳を持たないと<br />言う風情だった。<br />「僕が居ないと、あの人はだめになってしま<br />うんだ。だから僕は帰らない」<br /> その言葉を聴いて、理恵は雷に撃たれたよ<br />うな衝撃を感じた。<br /> たっくんの口から出た言葉が信じられなか<br />った。<br />「どうしちゃったの?たっくん!あの女に脅<br />されてるのね?」<br />「帰りましょう」と、理恵が手を取ったが、<br />「帰らないと言ってるだろう!」と、たっくんは<br />その手も振り払った。<br /> 理恵は信じられないと云った表情で泣き出<br />した。<br /> たっくんは、そんな理恵と信を尻目にその<br />場を逃げるように去ってしまった。<br /> 信君は「仕方ない。本人がああ言ってるん<br />では……。さ、帰ろう」と云って、泣いてい<br />る理恵の肩を優しく包んで、車の方へ促した。<br /><br /> おわりようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-75664679386253835092009-09-09T21:58:00.000+09:002009-09-09T21:59:06.415+09:00たっくんの完全なる飼育(14) それだけでも、進展があった。<br />「まだ、諦めるのは早いわ。まだ、このビル<br />にいるか、もしくはそう遠くへは行ってない<br />はずよ。探しましょう」と理容子は云った。<br /> 理恵は「そうね」と頷くと、理容子と一緒<br />に、更に下の階を探した。<br />「おかしいわねー。あの女の気配を全く感じ<br />ないわ」と理容子は云った。1階まで、降り<br />て来たが、女の気配は感じ無かったようだ。<br />「ちょっと、外へ出てみましょう」と理容子は<br />云った。<br /> 二人は外へ出ると、キョロキョロと辺りを<br />見回した。<br /> すると、またしても、理容子が女を発見し<br />た。<br />「居たわ!こっちよ!」<br /> そう言うと、理容子は駆け出した。<br /> 理恵も後に続いた。<br /> 女は横断歩道の所で信号待ちをしていた。<br /> 理恵達は、信号待ちをしている女の背後へ<br />近づいた。<br /> 理恵は女の横顔を間近で見た。<br /> 理容子が言ったように、20代後半と見ら<br />れる女だった。顔はとびきり美人という程で<br />もないが、まあまあの顔立ちと云う所か。<br /> 髪はロングでカールヘアー。<br /> 身なりは派手でも無く、地味でもないごく<br />普通のOL風の格好をしていた。<br /> 理恵はこっそり、ケータイで女の横顔を写<br />真に撮った。<br /> 理容子はさり気なく、女の背後に立って、<br />「あら、ごめんなさい」と云って、ちょっと<br />よろめくように女に接触した。<br /> 女は「いいえ」と云った。<br /> 女に接触した理容子の顔が驚愕の顔に変わ<br />った。<br /> 理容子は理恵の耳元で小声で云った。<br />「この女が竹部さんを誘拐して、監禁してい<br />るわ」<br />「え?まさか!?本当なの?」<br /> 理恵は咄嗟に言葉が出なかった。まさか、<br />監禁なんて。しかも、女が男を……。もし、<br />そうだとすると、これは立派な犯罪だわ。早<br />く警察に届けなくてはと思ったが、証拠が無<br />い。<br />「共犯者はいるの?」と聞いたが、単独犯だ<br />という返事が返って来た。<br /> 理容子は続けた。「あたしも驚いたわ。接<br />触した途端に、竹部さんの監禁されている姿<br />が、脳裏に浮かんだわ。とにかく、この女を<br />尾行しましょう」と云った。<br /> 二人は女に気づかれないように尾行をする<br />ことにした。<br /> 女は横断歩道を渡って、バス停でバスを待<br />っていた。<br /> 理恵たちも同じく、バスを待った。<br /> やがて、バスが来て、女はバスに乗った。<br />理恵たちも、後に続いて、バスに乗った。<br /> 理恵たちは、女が座ったシートの少し後ろ<br />に座って、女を監視した。<br /> しばらくバスに乗っていると、女が降りる<br />用意をしだしたので、理恵たちも後を追って、<br />降りた。<br /> 女はバスを降りると、商店街の方へ歩いて<br />行った。<br /> 女は八百屋に入った。何か、店主と話して<br />いるようだ。<br /> しばらくすると、八百屋から女は出て来た。<br /> 再び、理恵たちは、女に気づかれないよう<br />に後を追った。<br /> 女はマンションに着くと、中に入って行っ<br />た。<br /> マンションは他人が入れない様になってい<br />るセキュリティマンションだった。<br /> これ以上、中の様子を確かめる事は出来な<br />かった。<br /><br /> 仕方が無いので、理恵たちは先ほど来た道<br />を引き返して、先ほど、女が入って行った商<br />店街の八百屋へ行った。<br /> 八百屋の看板には、『檻商店』と書いてあ<br />った。<br /> 八百屋に入ると、先ほどの店主が出て来た。<br /> 八百屋のおやじは、「いらっしゃい。きゅ<br />うりが安いですよ」と云った。<br /> 理恵はおやじに聞いた。<br />「あのう?つい先ほど、若い女の人が買い物<br />をして行ったと思うんですけど。ロングヘアー<br />の女の人なんですけど……」と云うと、おや<br />じは「あっ。ようこちゃんの事かい?」と云<br />った。<br />「名前は解からないんですけど、ようこさん<br />と言うんですか?」<br /> おやじは怪訝そうな顔をして言った。<br />「あんた達の聞いてるのは、この先のマンシ<br />ョンに住んでる、ようこちゃんの事じゃ無い<br />のかい?」と云った。<br />「あっ。そうそう、ようこさんだった」と、<br />理恵は咄嗟に誤魔化した。<br />「で、ようこちゃんに何か用かい?」と聞い<br />て来たので、もう良いですと言って、店を出<br />た。<br /> 理恵たちは、たっくんの居場所をとうとう、<br />突き止めた。謎の女の名前は『ようこ』。 <br />そして、あのマンションの中には、たっくん<br />が監禁されているに違い無かった。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-44839880376705378102009-09-09T21:57:00.000+09:002009-09-09T21:58:17.176+09:00たっくんの完全なる飼育(13) 理恵は焦っていた。理容子から聞いた、た<br />っくんの状態を考えると、一刻の猶予も許さ<br />れないのではないだろうか?<br /> こうしている間にもたっくんの身の上に何<br />か起こっているかも知れない。<br /> 理恵は居ても立ってもいられなかった。<br /> 理容子から、たっくんの状態を聞いてから、<br />はや一週間が過ぎようとしていた。<br /> その間、何の手掛かりも無かった。<br /> たっくんが失踪してから、1ヶ月近くが過<br />ぎようとしていた。<br /> 一緒に街中を歩いて、たっくんの痕跡を探<br />して貰うように、理恵は再び、理容子に頼ん<br />だ。<br /> 理容子は快く応じてくれた。<br /> 今度の日曜日に、三宮駅の前で、会う約束<br />をした。<br /><br /> 理恵は約束の時間に三宮駅前に行った。<br /> 少し待っていると、向こうから、歩いてくる<br />理容子が見えた。<br />「ごめんなさい。待った?」<br /> 理容子はそう言いながら、こちらに近づい<br />て来た。<br />「ううん。あたしも今、着いたところだから。<br />何処を探せばいいか解からないけど、ちょっ<br />と、あちらの方へ行ってみましょうか?」<br /> 理恵は理容子と二人で街中を歩き廻った。<br /> 理容子は人ごみの中は苦手らしく、始終、<br />緊張した面持ちで歩いていた。<br />「理容子さん。ごめんなさい、休みの日だと<br />言うのに、こんな事につき合わせてしまって」<br /> 理恵は理容子に対して、申し訳ないと思った。<br /> 理容子は首を横に振った。<br />「ううん。あたしは理恵さんに協力したいの。<br />あたしも乗りかかった船だもの。竹部さんが<br />一日も早く見つかるといいわね」<br />「理容子さん。ありがとう……」<br /> 理恵は理容子の言葉に胸が熱くなった。<br /><br /> 午前中、あちこちを歩き廻ったが、何の手<br />掛かりも掴めなかった。<br />「お腹が空いたわね。ちょっと、そこのレス<br />トランで食事をしましょうか?」<br /> 理恵は前方に見えるファミレスで理容子と<br />食事をする事にした。<br /> 食事をしながら、理容子は言った。<br />「あたし、人ごみの中はすごく苦手なの。人<br />が多い所は、直接接触しなくても、他人の想<br />念が流れ込んでくるので、常に緊張して、気<br />を張っていないといけないの」<br />「そうなんだ?ごめんなさい。こんな所へ連れ<br />出して」<br />「ううん。理恵さんの為だもの」<br /> 理容子は微笑んだ。今日初めての笑顔かも<br />知れない。本当に申し訳ないと思った。<br />「まだ、何の手掛かりも掴めないわね。あた<br />し、家に一人で居ると、たっくんの事を考え<br />て、気が変になりそうなの。何もしないでい<br />るよりは、こうして動いていた方が、気が楽<br />なの」<br /> 二人は食事を終えて、近くのデパートへ入<br />った。<br /> 何かを買う訳でも無いが、洋服などを見て<br />いた。<br /> ふいに、理容子が理恵の袖を引っ張った。<br />「ね!理恵さん。あの女よ!」<br />「え!?何?」<br /> 理恵が指さす方を観ると、遠方に女の人が<br />見えた。遠くて顔は良く見えなかった。<br />「あの女よ!喫茶店と欄干で見えた女」<br /> 理恵は、こんな所で、謎の女が見付かると<br />は思っても居なかったので、びっくりした。<br />「え?本当なの?」<br /> 理恵が指さす女はエレベータに乗ろうとし<br />て居た。<br /> 理恵達は急いで、女の方を目指して駆け出<br />した。<br /> 女はエレベータに乗ってしまった。<br /> 理恵達が追いついた頃にはエレベータは閉<br />まって、階下へ降りて行ってしまった。<br /> エレベータは理恵達が居る8Fから、6F<br />で止まった。<br /> 急いで、走って、エレベータの近くの階段<br />を6Fまで下りた。<br /> 二人とも、はあはあと息を切らしながら、<br />6Fのエレベータ付近を見渡した。<br />「ねえ。あの女はいるかしら?」<br /> 理恵はあたりをきょろきょろと見回しなが<br />ら、理容子に聞いた。<br />「あの女の気配を感じないわ。見失ったみた<br />いね」<br /> 理容子は残念そうに言った。<br /> またしても、手掛かりを失ったように思え<br />たが、意外にも、謎の女はこの近辺に居ると<br />いう事が解かった。<br /> それだけでも、進展があった。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-49128600963666875512009-09-09T21:56:00.000+09:002009-09-09T21:57:22.817+09:00たっくんの完全なる飼育(12) 第四章 焦燥<br /><br /> すっかり、竹部もおとなしくなったわね。<br /> 初めの内は、なんとか逃れようと、じたば<br />たしていたようだけど、最近はすっかり大人<br />しくなって、安心だわ。<br /> ようこはそう思いながら、帰宅して、玄関<br />の鍵を開けた。鍵は特殊なもので、外側から<br />のみ開くものに変えていた。内側からは鍵が<br />無いと開かない構造になっていた。<br />「ただいまー。今日もいい子にしてた?」<br /> 竹部は、ようこが帰ってくると、飼い犬が<br />主人の帰りを喜ぶように、嬉しそうな顔をし<br />た。<br /> 犬の様に尻尾が付いていたなら、竹部はし<br />きりに、尻尾を振っていたに違いない。<br /> ここ二週間で、驚くほど、従順になった竹<br />部を見て、ようこは嬉しかった。<br />「いい子ね。じゃー、御褒美に足縄はもう、<br />解いてあげましょう。今日から足縄はしない<br />わ」<br /> そう言うと、ようこは竹部の足縄を解いた。<br /> 竹部は本当に嬉しそうな顔をした。<br />「ありがとう、ようこさん。ううう」<br /> 竹部は嬉しさのあまり、涙ぐんでいた。<br />「まあ?そんなに嬉しいの?じゃー、御褒美<br />をもっとあげる。おねーさんと一緒にお風呂<br />に入りましょうね」<br />「え?本当ですか?一緒に風呂に入っても<br />いいんですか?」と竹部は嬉しそうな顔をした。<br /> 竹部はすっかり、ようこに飼い慣らされて<br />しまったようだ。<br /> ようこは竹部の手錠をはずした。<br />「あたしが先に入ってるから、後から入って<br />来ても良いわよ」<br /> そう言うと、ようこは脱衣所に行った。玄<br />関の鍵は用心の為、一緒に持って行って、脱<br />衣所の棚の上の方に隠した。<br /> 先に湯船に入って、待っていると、洗い場<br />に竹部も入って来た。<br /> 竹部は恥ずかしそうに、前をタオルで隠し<br />ていた。<br />「さ、そこに立ってないで、ここへお入んな<br />さい」<br /> 湯船に一緒に入るように促すと、竹部はお<br />ずおずと湯船に入ってきた。<br /> ようこは、自分の裸を見て興奮している竹<br />部を見るのが面白かった。<br />「あら?何、タオルで前を隠してるの?そん<br />なに大きくして。嫌らしいわね」<br /> ようこは竹部の一物をぎゅっと握った。<br />「いっ!」竹部は男の急所を急に握られたの<br />で顔をしかめ、短く声を漏らした。<br /> そのまま、竹部の硬くなったものを上下に<br />しごいた。<br /> 竹部は気持ち良さそうに、目を瞑っている。<br /> 竹部のものはますます、熱く、硬くなって<br />いた。<br />「さ、出るわよ。あたしの背中を流して」<br /> 竹部の視線を背中に感じながら、ようこは<br />湯船から出た。<br /> 湯船から出て、椅子に座ると、竹部も後に<br />続いて、湯船から出た。<br /> 竹部は言われるままに、タオルに石鹸を付<br />けて、ようこの背中を流した。<br /> 時々、間違った振りをして、ようこのおっ<br />ぱいの方まで、手が伸びてきた。<br /> ようこは、すかさず、その手をぴしゃっと<br />叩いた。<br />「何してるの!誰がお乳を触って良いって言<br />った?」<br /> 竹部は子供が叱られた時のように、「ごめ<br />んなさい」と小さくなって謝った。<br /> その様子を見て、ますます、竹部を虐めて<br />やりたくなった。<br />「反省してる?じゅあ、罰として、あたしの<br />乳首を10分間舐めなさい」<br /> 竹部は従順に「はい」と返事をして、ようこ<br />の前に回りこむと、中腰に成って、ようこの<br />おっぱいを鷲づかみにした。<br /> 竹部の痛いほど怒張した一物が天を突いて<br />いるのが見えた。<br />「ちょっと!痛いわね!もう少し優しくする<br />のよ!」<br /> ようこに叱られ、益々、竹部は小さくなっ<br />て、ようこの乳首を舐めた。<br /> 竹部はチュパチュパと音を立てながら、よ<br />うこの乳首を舐めた。<br /> ようこは竹部の怒張した一物の先端を触っ<br />てみた。先端は先走りでヌルヌルしていた。<br />「たっくん。何?このヌルヌルしたものは?<br />本当に嫌らしいわね、あなたって」<br /> ようこは、しきりに乳首を舐める竹部の頭<br />を見下ろしながら言った。<br /> 全然、罰になっていないけど、気持ち良い<br />から、ま、いいかと思った。<br />「さ、もう良いから、出るわよ」<br /> 竹部は名残り惜しそうにしながら、ようこ<br />の乳首を舐めるのをやめた。<br /> ようこはお風呂から出ると、バスタオルを<br />竹部に渡し、「あたしの体を拭きなさい」と<br />命令した。<br /> 竹部は嫌がる様子も無く、自分は濡れた体<br />のまま、嬉々として、ようこの濡れた体をバ<br />スタオルで丹念に拭った。<br /> 特に、ようこの水の滴る、股間の茂みは丹<br />念に拭った。<br /> タオルが性器に触れるたびに気持ち良かっ<br />た。<br /> あまり、したい放題にさせておくと、図に<br />乗ると思い、竹部の手を払い退けた。<br />「もう、良いわ」素っ気無く、そう言うと、<br />ようこはさっさと、下着とパジャマを身に着<br />けると、リビングの方へ行った。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-19367321316469204792009-09-09T21:55:00.000+09:002009-09-09T21:56:15.212+09:00たっくんの完全なる飼育(11) 理容子はそんな理恵を見て、気の毒に思っ<br />たのか、「ちょっと、外へ出てみましょうか。<br />何か手掛かりになる物があるかも知れないわ」<br />と言った。<br /> 理容子は喫茶店を出た。<br /> 理恵、利美と信も後に続いた。<br /> 理容子は歩きながら、話した。<br />「強烈な記憶を刷り込まれた物体は、遠く離<br />れていても、その思念を感じることがあるの。<br />だから、このあたりで、竹部さんの何か手掛<br />かりになる物が見つかるかも知れないわ」<br /> 歩きながら話していると、理容子の足が急<br />に止まった。<br />「向こうの方に竹部さんの思念を感じるわ」<br /> 理恵は、たっくんがこの近くに居るのか?<br />と思った。<br />「本当ですか?」<br /> 理恵は理容子の顔を覗き込んで、尋ねた。<br /> 近くには川が流れていた。<br />「こっちの方よ」<br /> 理容子は橋の方に向かって、早足で歩いて<br />行った。<br /> 理恵達も理容子の後を追った。<br /> 理容子は橋の欄干の所で立ち止まった。<br /> 手摺に触った。<br />「ここで竹部さんは川を眺めていたわ」<br /> 理容子は続けた。<br />「ここで感じるのは竹部さんの悲しみ・自責・<br />不安・孤独……」<br /> それを聞いて、理恵ははっとした。<br /> あたしのせいでたっくんを追い込んでしま<br />ったと思った。<br /> 不意に熱いものが込み上げてきた。<br /> 涙が自然に出て来た。<br />「うわーん。たっくん。ごめんなさい」<br /> 信は理恵が泣くのを見て、「そんなに、自<br />分を責めるなよ」と、優しく慰めた。<br /> 理容子は続けた。<br />「竹部さんはここで、ひがな一日、川を眺め<br />ていたわ。それと、先ほど、喫茶店で感じた、<br />女の人とも、ここで一緒にいたわ」<br /> 理恵は、またもや、謎の女かと思った。<br />「また、女の人ですか?その人はたっくんと<br />一緒に居るんですか?」<br />「ええ。竹部さんは、女の人とここで会って、<br />それから、喫茶店に行ったみたいね」<br />「そうですか。他に何か解かりますか?」<br /> 理容子は欄干を触わりながら言った。<br />「竹部さんは、その女の人と何度か会ってい<br />ます……。残念ながら、解かるのは此処まで<br />です」<br /> 理容子は申し訳なさそうに言った。<br /> 理恵は涙をハンカチで拭うと、「ううん」<br />と首を振って、「ありがとう。すごく参考に<br />なったわ」と理容子に礼を言った。<br /> 理容子は「あたしで良ければ、いつでも御<br />協力します。また呼んでください。今日のと<br />ころはこれで……」と言った。<br />「うん。ありがとう。またね」と、理恵は別れの<br />挨拶をすると、理容子は帰っていった。<br /> 利美も用事が在るからと言って、帰った。<br /> 信君と二人になり、謎の女の事を話した。<br /> 二人の意見は、たっくんの失踪は、謎の女<br />が絡んでいるという事で一致した。<br /> はたして、その女は何者なのか?<br /> 手繰り寄せた糸は、またしても、ここで、<br />ぷっつりと切れてしまった。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-15174049471701450082009-09-09T21:54:00.000+09:002009-09-09T21:55:19.588+09:00たっくんの完全なる飼育(10) 不思議な少女の話はまだ続いた。<br />「最初に物体には記憶があると言ったけど、<br />たまに、物体に人間の魂が宿ることもあるの。<br />たとえば、人形とか。日本人形の髪の毛が伸<br />びて来たとか、言う話を聞いた事あるかなぁ?<br /> これなんかは物体が魂を宿す典型的な例な<br />んだけど。<br /> 人間の物に対する執着が強ければ強いほど、<br />その物体には人間の記憶が強烈に刷り込まれ<br />るの。そして、その強烈な記憶は物質を原子<br />レベルで変質させてしまうの」<br /> 理恵は理容子の話を聞いていて、だんだん、<br />背筋が寒くなってきた。<br /> この子は本物だと思った。<br /> 人に接触するだけで、相手の考えが読める<br />のなら試してみようと思った。<br />「理容子さん」<br /> 理恵に呼ばれ、理容子は話を中断した。<br />「はい?」<br />「あの。人に触れるだけで、相手の考えが読<br />めるんですよね?」<br />「はい。ちょっと、相手に触れるだけで、相手<br />の想念がわたしに流れ込んできます。<br /> 心の準備無しに不用意に相手に触ると、わ<br />たしの自我が危険に晒されます」<br />「自我が危険に?」<br /> 自我の危険とは何だろう?理恵は不思議そ<br />うに聞いた。<br />「はい。触った相手の自我がわたしの自我を<br />凌駕した場合、あたしの自我は瞬間的に無く<br />なることもあります。簡単に言えば、わたし<br />が、接触した相手に成ってしまうのです」<br />「じゃー、接触した人はどうなるの?」<br />「どうにもなりません。普段と何も変わりません。<br />ただ、わたしの方は相手の自我のコピーを受<br />けとり、すりかわってしまいます。<br /> でも、それも、直ぐに元に戻りますが、す<br />りかわっている間のわたしの記憶はありませ<br />ん」<br />「へー。そーなんだ?じゃー、満員電車なん<br />か、乗れないんじゃない?」<br />「その点は大丈夫です。電車に乗るときは気<br />お張っていますから」と理容子は笑った。<br />「じゃぁさ。わたしに触って、わたしの考え<br />てる事を言って貰ってもいい?」<br />「はい。良いですよ」と言って、理容子は右手<br />で軽く、理恵の肩に触った。<br />「そうですねぇ。理恵さんは今、失踪した、<br />たっくんと言う人の事を考えています。そし<br />て、その人に関わっているかも知れない女の<br />人のことを考えています。あとは、今朝、朝<br />食を抜いたので、お腹が空いてきたなぁと思<br />っています」<br /> まさに、そのとおりだった。<br />「すごい……。そのとおりよ……」<br /> 心の中を読み透かされた。理恵は理容子に<br />対し、得体の知れない不快感を感じた。<br /> その遣り取りを見ていた、信君は俺にもお<br />願いしますと言って、理容子に肩を触って貰<br />った。<br />「そうですね。信さんは、今……」<br />「今、何?」理恵はごくっと生唾を飲んで、<br />先を促した。<br />「トイレに行きたいと思っています」<br /> その答えを聞いて、ぷっと吹いてしまった。 <br />「なんだ、信君、早くトイレに行きなよ。あ<br />はは」<br /> 信君は「かたじけない」と言って、恥ずか<br />しそうに、いそいそと、トイレに行った。<br /> 次に、理恵はたっくんの写真を理容子に渡<br />した。<br />「その写真の子がたっくんなんですけど。何<br />か感じますか?」<br /> 理容子は写真を手に取って眺めていたが、<br />不意に窓際のソファーに移動して、ソファー<br />を触り始めた。<br />「ここに、この写真の男の子が座って居たわ」<br />と理容子はソファーを摩りながら言った。<br />「え?本当ですか?それは、いつの事か解か<br />りますか?」<br /> 理恵は急き込んで尋ねた。理容子は続けた。<br />「そうですねぇ。二~三週間前ぐらいかしら。<br />一緒に女の人が居るのが見えます。20代後<br />半ぐらいの女の人です」<br /> 理恵は間違い無いと思った。たっくんはこ<br />こで、女の人と会っていた。<br />「マスターの言ってた人だわ。その女の人と<br />何処へ行ったか解かりますか?」<br />「うーーん。それはわからないわ。この、ソファー<br />の記憶から解かるのは此処までね」<br /> 理容子の答えを聞いて、理恵はがっかりした。<br /> 理容子はそんな理恵を見て、気の毒に思っ<br />たのか、「ちょっと、外へ出てみましょうか。<br />何か手掛かりになる物があるかも知れないわ」<br />と言った。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-11745292424555804852009-09-09T21:53:00.000+09:002009-09-09T21:54:19.416+09:00たっくんの完全なる飼育(9) 第三章 霊感少女<br /><br /> 理恵はなんとしても、理容子に会いたかっ<br />た。<br /> 会って、その超能力の真偽の程を確かめた<br />かった。その超能力が本物なら、きっと、た<br />っくんの行方の手がかりが掴めるはず、と思<br />った。<br /> 理容子に会えるように、利美に頼み込んだ。<br /> 利美はわかったと言った。会える手はずが<br />整ったら、連絡すると言った。<br /><br /> 明後日、利美から、連絡があった。<br /> この間の喫茶店に理容子を連れてくる、と<br />言って電話は切れた。<br /> 理恵は信に連絡し、喫茶店に向かった。<br /> 喫茶店には既に、利美と理容子らしき女の<br />子が来ていた。<br />「おまたせー」<br /> 理恵は喫茶店に入ると、利美と、その女の<br />子を見た。<br /> 女の子は別段、変わった様子は無く、どこ<br />にでもいる普通の女子大生という感じだった。<br /> 利美が紹介した。<br />「この子が理容子ちゃんです」<br /> 理容子は軽く会釈をすると、「はじめまし<br />て」と言った。<br />「こんにちは。あたしは、理恵です」<br /> お互いに自己紹介をしていると、遅れて、<br />信君もやって来た。<br />「ごめん、ごめん。遅くなって」<br /> 信は慌てて来たようで、息が乱れていた。<br /> 理容子さんに信君を紹介して、早速、本題<br />に入った。<br />「理容子さん、ごめんなさい。初対面なのに<br />呼び出すような事をして。利美から聞いてい<br />ると思いますけど、あたし達の友達が失踪し<br />て、行方がわからなくなっているの。そこで、<br />理容子さんの力を借りられないかなと思って<br />……」<br />「はい。だいたいのお話は利美ちゃん<br />から聞きました。あたしで、お役に立つなら、<br />ご協力します」<br /> その返事を聞いて、理恵は安心した。<br />「本当ですか?ありがとうございます」<br /> 理恵は礼を言った。<br /> この子が本当に超能力の持ち主なのかどう<br />か、確かめなくてはと思った。<br />「あのう?利美から、聞いたんですけど、理<br />容子さんは、本当に未来が見えるんですか?」<br /> 理恵からの突然の質問に理容子は困ったよ<br />うな顔をして言った。<br />「え?あたしは未来を見ることは出来ません」<br /> 理恵は理容子の以外な返答を聞いた。<br />「理容子さんは人の考えていることが判るっ<br />て聞いたんですけど……」<br />「そんな……。正しくは、何て言えばいいのか<br />な?物に触ると、その物体が持っている記憶<br />を読み取ることが出来る、と言えばいいかしら?<br /> 全ての物体には記憶があるのよ。丁度、コ<br />ンピュータのメモリーみたいにね。あたしは、<br />その物体の記憶を触るだけで、直接読み取る<br />ことが出来るの。<br /> だから、人に触れると、その人の考えてい<br />る事がわかるの。<br /> あとは、人の想念の凝り固まった場所とか<br />に行くと、その想念に囚われてしまう事もあ<br />るわ。<br /> 例えば、不慮の交通事故で亡くなった人が<br />自縛霊となっている場所にさしかかると、急<br />に車のハンドルが動かなくなって、危うく事<br />故を起こしそうになったりとか……。<br /> だから、超能力と言うよりも、霊感力だと<br />思うの。<br /> あたしは、この能力のおかげで、今まで、<br />どんなに嫌な思いをして来たことか。<br /> 一時は自殺も考えたわ……」<br /> 理恵は理容子さんの深い悲しみの一端を垣<br />間見たような気がした。<br /> 理容子は淡々と話を続けた。<br />「だから、あたしの場合は未来はわからない<br />わ。あたしの思うに予知能力というのは、当<br />たらないものだと思うの。<br /> これも、木から教えて貰った知識なんだけ<br />ど……」<br />「木?あの?植物の木ですか?」<br /> 理恵は聞き間違いかと思って、不思議そう<br />に聞いた。<br /> 理容子は微笑みながら言った。<br />「そ、植物の木よ。キャンパスに300年前<br />の銀杏の木があるんですけど、あたし、時々、<br />その銀杏の木に触って、お話するの」<br /> 銀杏と話しをする少女か……。なんとも、<br />不思議な少女だと思った。<br /> 理容子は話を続けた。<br />「その、銀杏の木が言うには、未来は現在の<br />延長上にあるんだけど、幾つも枝分かれして<br />いるの。その枝分かれした先が未来なの。だ<br />から、いくつもの未来が無数にあるの。その<br />未来は、丁度、RPGゲームのようにその時<br />の選択によって、時々刻々と変わっていくの。<br /> だから、未来をある程度、予測は出来ても<br />見る事は不可能なんだって。銀杏の木さんは<br />言ってたわ」<br /> 聞けば聞く程、不思議だと思った。<br />「また、銀杏の木さんはこうも、言ってたわ。<br />だから、タイムマシンという物は無いんだっ<br />て。過去に戻る事は出来ても、その過去から、<br />今来た、未来へ戻ることは不可能だって。だ<br />って、未来は時事刻々と変わっているから、<br />過去に着いた時点で未来は、もう変わってし<br />まっているの。だから、もと来た未来へは戻<br />れない。結局、タイムトラベラーは時間の狭<br />間を彷徨うことになる訳。だから、タイムマ<br />シンは意味が無いそうよ」<br /> 不思議な少女の話はまだ続いた。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-59664330617832433682009-09-09T21:52:00.000+09:002009-09-09T21:53:14.189+09:00たっくんの完全なる飼育(8) コーヒーを飲みながら、信君と、これから<br />どうするか話しあった。<br /> 信君と話していると、先ほどのマスターが<br />何か言いたそうな顔つきで、あたし達のテー<br />ブルへやって来た。<br />「そういえば、この前、丁度、二週間ほど前<br />かなぁ。<br /> そ、丁度、お客さん達ぐらいの男の子と、<br />20代後半ぐらいの女の人が一緒に、店に来<br />ましてね。<br /> この店もあまり、お客さんが来ないもんで<br />……。わたしも暇してたんで、妙に気になり<br />ましてね。それで、憶えてたんですがね……」<br /> 理恵はバッグの中から、たっくんの写真を<br />取り出して、マスターに見せた。<br />「この、男の子なんですけど……」<br /> マスターは写真を受け取って、しげしげと<br />見た。<br />「うーん?この男の子だったようにも思うけ<br />ど?はっきりは憶えてないなぁ」<br /> 写真を理恵に返しながら、残念そうに言った。<br />「そうですか」<br /> マスターの曖昧な返事を聞いて、理恵は少<br />しがっかりした。<br /> マスターの話の中の男の子がたっくんだと<br />すると、女の人と一緒に居たと言う事か?<br /> いったい、その女は誰なんだろう?<br /> 理恵には心当たりが無かった。<br />「その、女の人って誰なんだろうな?」と、<br />信君が言った。<br />「信君も、その女の人に心当たりは無いのね?<br />誰なんだろう?」<br /> あたし達は、これ以上、マスターに聞いて<br />も何も得るものは無いだろうと思い、礼を言っ<br />って、再び信君と相談を続けた。<br /> 探偵社に頼んでみようとか、自分達で、こ<br />のあたりの聞き込み調査をしようとか……。 <br /> 信君と話していると、ふと、理恵の頭の中に、<br />ある人物のことが浮かんだ。<br /> それは、理恵の友達で、姫路女子短大に通<br />っている、利美という子から聞いた話だった。<br /> いつものように、喫茶店に、仲良しの仲間<br />が集まって、話している時に、その話題は出<br />た。<br /> 利美の通っている短大には、不思議な少女<br />がいると言う話だった。<br /> 利美から聞く所に依ると、その少女が、物<br />に触れると、その物体が持つ記憶とでもいう<br />べきものが頭の中に流れ込んで来ると言うの<br />だ。そもそも、物体に記憶があるというのも、<br />おかしな話だと思った。<br /> 例えば、その物体が個人が愛用している物<br />であったり、着物であったりと愛着の深い物<br />であればある程、その物体は強烈に所有者の<br />記憶を所持しているというのだ。<br /> 海外では、行方不明者の捜索に超能力者を<br />用いて、実績を上げているという話を、この<br />前、テレビのバラエティ番組か何かで見たの<br />を思いだした。<br /> この事を信君に話した。藁をも縋りたい思<br />いだったので、早速、利美に電話して、その<br />女の子に会ってみようと言う事になった。<br /><br />「もしもし、利美?うん。あたし。あのね、<br />この前の話で、利美の学校に不思議な女の子<br />が居るっていう話が出たじゃない?うん。<br />それでね、その子に会いたいんだけど、会え<br />るかなぁ?実は、友達が行方不明で……。<br />え?ここに来るって?うん、判った」<br /> 理恵はケータイを切った。<br /> 信君に、利美が今すぐここへ来てくれるこ<br />とを伝えた。<br /> 30分ほどして、利美がやって来た。<br />「こんにちわー」<br /> 利美は挨拶すると、テーブルに着いた。<br /> 理恵は信君のことを利美に紹介すると、早<br />速、本題に入った。<br />「それでね。その不思議な少女なんだけど、<br />会ってくれるかなぁ?」<br /> 利美は眉をしかめて、気むづかしそうに言<br />った。<br />「その子なんだけど、ちょっと変人なのよ。<br />あたしは話したこと無いから判らないんだけ<br />ど、みんなは気味悪がって、近づかないの」<br />「名前はなんて、言うの?」<br />「理容子っていうんだけど、友達から聞いた<br />話だと、その子、相手の心の中が読めるっ<br />ていうの?こっちの考えている事を、話して<br />もいないのに、先走って話してみたり……。<br /> 心の中を見透かされているみたいで……。<br /> それで、気持ち悪がって、みんな、その子<br />に近づかないの」<br /> 利美の話を聞いて、理恵はますます、その<br />子に会いたくなった。<br /> 会って、たっくんの事を頼んでみようと思<br />った。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-4208276543903996177.post-77689332177472705762009-09-09T21:51:00.000+09:002009-09-09T21:52:04.040+09:00たっくんの完全なる飼育(7) とりあえず、今日のところは帰ることにし<br />て、二人とも、帰路についた。<br /> 翌朝、警察のほうから連絡があって、信君<br />と、署の方へ出向いた。<br /> 警察の方から、家族の方へも連絡があった<br />みたいで、たっくんのお母さんらしき人も来<br />ていた。<br /> たっくんのお母さんらしき人は、あたし達<br />を見て、直ぐ友達とわかったのか、こちらの<br />方へ近づいてきた。<br />「あのう?皆さんは、内の息子のお友達です<br />か?」<br />「はい。そうです。同じサークル仲間なんです」<br />と、あたしは答えた。<br />「そうですか。このたびは内の息子がご迷惑<br />をかけて……」<br /> そう言うと、たっくんのお母さんは、嗚咽を<br />漏らして、泣き出した。<br />「あ。ごめんなさいね。わたしは、やち子と<br />言います。息子はめったに実家に帰って来な<br />いもんですから。まさかこんな事になってる<br />とは思いませんでした……」<br /> そう言うと、また泣き出した。<br /> そこへ、たっくんのお父さんらしき人もや<br />って来た。<br />「あ。朗愚のお友達の皆さんですか。本当に、<br />うちの馬鹿息子がご迷惑をかけて……」<br /> たっくんのお父さんは少し怒っているよう<br />に見えた。<br /> 信君は片手を振りながら、「いいえ。迷惑<br />だなんて……。俺たちに出来ることは何でも<br />します」と言った。<br /> たっくんの両親は警察へ家出人捜索願を出<br />した。<br /> 家出人にも種類があり、「一般家出人」と<br />「特異家出人」が、あるそうだ。<br />「一般家出人」は事件性の無いもの、「特異<br />家出人」は何か事件に巻き込まれた可能性の<br />あるものだそうで、たっくんの場合は、事件<br />性は無いものと見做され、一般家出人扱いを<br />された。<br /> 一般家出人だと、警察の捜索はしないと言<br />われた。<br /> 何か判ったら、連絡しますからと、警察の<br />人に言われ、たっくんの両親はがっくりと肩<br />を落として帰って行った。<br /> あたし達も仕方なく、帰路についた。<br /> <br /> ・・・・<br /><br /> 警察へ行って捜索願いを出してから、早、<br />一週間が過ぎようとしていた。<br /> あれから、警察の方からは何の連絡も無か<br />った。<br /> 信君とあたしは、その後、何の手がかりも<br />掴めないまま、無為の日を過ごしていた。<br /> 信君を誘って、再度、たっくんのアパート<br />へ行ってみた。<br />『ひょっとして、たっくんは、帰っているか<br />も』と、凡そ考えられない現実離れした期待<br />を胸にして……。<br /> ピンポーン。一応、ドアのチャイムを鳴ら<br />してみた。<br /> やはり、たっくんは帰っているはずも無か<br />った。<br /> たっくんのアパートの近くに喫茶店があっ<br />たので、信君と入った。<br /> 入り口の看板には、『喫茶 観留』と書い<br />てあった。<br /> 何だか、薄暗い店内だ。他に客は見あたら<br />なかった。<br /> あたし達は、入り口の近くのテーブルの椅<br />子に座った。<br />「いらっしゃいませ」<br /> 店の奥から、およそ40代くらいのマスター<br />と思しき人がやって来た。<br /> 男は愛想の無い顔で、「何に致しましょう?」<br />と、ぼそっと言った。<br /> マスターからメニューを受け取って見ると、<br />メニューの種類がとても少なかった。<br /> 信君とあたしは、取り合えず、ホットコー<br />ヒーを頼んだ。<br /> 間もなく、男はホットコーヒーを二つ持っ<br />て来た。<br /> ここのマスターなら、何かたっくんの事を<br />知っているかも知れないと思い、だめ元で聴<br />いてみた。<br />「あのう?この近くに住んでいる、若い男の<br />子で竹部朗愚っていう子が居るんですけど、<br />知ってますか?」<br /> 男は、しばらく考えていたが、「ん~。ち<br />ょっと判らないなぁ」と、言った。<br /> 予想していた答えが返ってきた。<br /> コーヒーを飲みながら、信君と、これから<br />どうするか話しあった。ようこhttp://www.blogger.com/profile/15415366706951039629noreply@blogger.com0