2009年9月7日月曜日

モール街の夢魔

   「モール街の夢魔」

           ようこ( ̄ー ̄)v

 みなさん、はじめまして。【ようこ】と申
します。
 私は地方の小さなタウン誌の記者です。
 新しいお店や人気のお店等の取材に行って
は原稿を起こしています。
 私の暮らしている市の郊外に今度、新しい
ショッピングモール街が出来たので、取材に
行くことになりました。
 そこは何十ヘクタールという広い土地に出
来た、遊園地や映画館のある複合型巨大ショ
ッピングモールです。
 休みの日にはマイカーの家族客が続々と集
まってきて、週末の近隣一体はいつも車で渋
滞しています。
 
 上司と相談し、今回はモール街のブティッ
クを中心に取材することになりました。
 混雑を避けて、会社の車で、開店前の早い
時間に行ってみたんですけど、取材目的のお
店にはもう既にお客さんが行列を作って、開
店を待っていました。

 今回は取材という事なので、お店のスタッ
フにお話して、開店前のお店に入れて頂きま
した。
 清楚なワンピースを着た、女性が応対に来
ました。
 私は早速、取材を開始しました。
「おはようございます。セカンドタウンの
《ようこ》と申します。
 今日は、この新しいモール街での御社の開
店という事で取材に来ました」
 事前に取材の申し込みをしてある為、女性
は緊張しながらも、笑顔で応対しています。
「はい。ありがとうございます。当店では、
フォーマルにも、カジュアルにも着ていただ
けるものを低価格でご提供しています。
 多くのお客様に親しんで頂けるお店をモッ
トーにしております」
「そうですか。今日は開店前から、沢山のお
客様がお店の前に行列を作っていますね。
 この巨大ショッピングモールでの今後の展
開が楽しみですね」
「はい。ありがとうございます。開店前から
こんなにも沢山のお客様がお越しになり、本
当にありがとうございます。
 でわ、当店の品々をご説明させて頂きま
す」
 女性は爽やかな笑顔で、私に商品の説明を
しました。
 一通り、取材も終了し、帰社しました。
 早速、デスクのPCに向かい、原稿を書き
ました。
 カタカタと原稿を書いていると、そろそろ
帰宅時間です。
 帰りの電車の時間も遅くなったので、自宅
で続きを書く事にしました。

 帰宅し、遅い夕飯を食べた後、お風呂に入
りました。
 お風呂から出て、パジャマに着替えて、髪
を乾かしました。
《さて、原稿の続きを書きますか》と、PC
の電源を入れ、続きを書くことにしました。
 しばらく原稿を書いていると、昼間の疲れ
からか、睡魔が襲ってきました。
 いつの間にか私はパソコンの前で眠ってい
たようです。

 私はモール街の昼間のお店にいます。
《あれ?さっき迄、自宅で原稿を書いていた
のに、何で私はここにいるの?》
 取材した店員が応対に来ました。
「あら?先ほどの……。どう致しました?」
 ふいに、店員に聞かれ、あたりをキョロキ
ョロ見回し、どぎまぎする私に、店員は笑顔
で言いました。
「ああー。商品の説明漏れがありましたね。
でわ、こちらへどうぞ」
 店員は昼間と同じ女性なのに、何か様子が
違います。
 よく見ると、着ている服が違っていました。
 先ほど?は清楚なワンピースを着ていたの
に、今は、黒のチューブトップにローライズ
のGパンと黒のハイヒールを穿いています。
 黒のチューブトップの下の胸は豊満で、歩
くたびにブルンブルンと揺れています。
 店員は屈んで、床上数センチの引き出しを
開け、何かを探しているようです。
 ローライズのGパンから、大きなお尻が半
分程、露出しています。
 驚いたことに、パンティーを穿いていない
ようにも見えます。
 女の私が見てもドキドキしてしまいます。
 しばらくすると、女性は目的の商品を見つ
けたようです。
「これが、今度の新商品なんですが、どうで
す?かわいいでしょ?
 試着なさってみます?」
 店員は赤いキャミソールを私に見せると、
どうぞ、と突き出しました。
「あ。いえ。今日は取材だけですから」と、
わたしが遠慮すると、女性は更に笑顔で、
「あらー。遠慮なさらずに、どうぞ。どう
ぞ」と、キャミソールを私に突き出します。
 ここで、無理に断って、気分を害するのも
何なので、仕方なく受け取って、試着室に向
かいました。
 こういう時って、気の弱い私はだめなのよ
ねー。
 試着室に入って、改めて、キャミソールを
見ると、凄い透けています。
《やだー。これじゃ下着が丸見えじゃない》
 上着を脱ぎ、キャミを着てみました。やっ
ぱり、ブラが丸見えです。
《これじゃー、普段着に着れないわね》
と、思っていると、不意にカーテンが開きま
した。
「あらー。とてもお似合いですよー」
 店員は満面の笑みで褒めています。
「これ、普段着には着れませんよね」と、私
が言うと、店員は
「そんな事ありませんよ。素敵ですよ」
と、笑顔で言いながら、私の胸に触ってきま
した。
 店員に胸を触られて、ブルっと身震いがし
ました。
 なんと言っていいのか、乳房の脇からお乳
の先の方へ、「ぞくっ」と来たと云うか、乳
首へ快感が「びびびっ」と走りました。
 私はフィットルームの床へ、へなへなと座
りこんでしまいました。
「どう致しました?大丈夫ですか?」
 店員はそう云うと、今度は私の背後から、
私を抱き起こそうとします。
 店員が私の両脇の下に手を入れ、抱え起こ
そうとしながら、私の胸を微妙に揉んできま
す。
 凄く気持ちが良くて、私はもう、失神寸前
です。
 はっと、我に返り、身を捩って、店員を見
ると、淫靡な表情をした店員が私の耳に息を
吐きかけながら、「大丈夫ですか?」と聞い
てきます。
 身を捩って、店員から逃げるように離れま
した。
 店員は悔しそうな顔をしています。
 ここで、はっと、目が醒めました。
《あら?何?夢だったのかしら?》
 妙にリアルな夢でした。
 先ほどの感触が胸に残っているようです。
 程なくまた、眠りに落ちました。
      ・・・
 「大丈夫ですか?」
《何?また、さっきの夢のつづき?》
 先ほどの状況と同じ夢がまた、繰り返され
ていると、夢の中で思いました。
 店員はそう云うと、私を背後から抱きかか
え、わたしを起こそうとします。
 どういう訳か店員の手は私の両胸のあたり
を完全に覆っています。
 店員は私の両胸を激しく揉みしだきながら、
右耳へ息を吹きかけ、耳朶を舐めてきました。
 心では抵抗しても体が云う事を聞きません。
店員に弄ばれながら、必死に抗う私が居ます。
「や……。やめてください」
 小さな声で抗っても、店員は、ますます頭
に乗って、店員の右手がずるずると私の下半
身に降りてきます。
「やめて……。や・め・て」
 ここで、再び目が醒めました。
 顔が真っ赤に上気し、興奮しているのが自
分でも分ります。
《あたし、どうしちゃったのかしら?欲求不
満?》
 時計の針を見ると、午前4時を指していま
す。まだ、起きるには早い時間だったけど、
寝るとまた、あの店員が出てきて淫行を行わ
れそうで、気持ちが悪くなり、そのまま、
夜が明けるまで、起きていました。
 朝になって、会社に出勤したわたしは、再
び、取材の為、車でモール街へ出かけました。
 お店には、夢の中で私に淫行をした店員が
いました。
「昨日はどうも」と話しかけてみると、相手
は普段と変わらない様子で挨拶をしてきまし
た。
 取材の為、別な箇所を廻ってみることにし
ました。
 何箇所か廻って、車に戻り、取材したとき
のメモやボイ
スレコーダを聞いていると、昨夜の寝不足も
あり、不意に
睡魔が襲ってきました。
          ・・・
 車の中に居たはずのわたしは、どういう訳
か、モール街の中央あたりの広場に居ます。
 あたりはすっかり、夕暮れ時で薄暗くなっ
てきました。
 建物の影でこちらを伺っている人物がいま
す。
 40代半ばくらいの男がこちらを見ていま
す。
 私の背筋に悪寒が走り、その場を脱兎のご
とく逃げ出しました。
 しばらくすると、男は追いかけてこないよ
うなので安心しました。
 ふと、足元を見ると、男物のお財布が落ち
ていました。
 モール街に交番があることを想い出し、交
番へ行って届けることにしました。
 すると、丁度そこへ、若い男の人が交番へ
向かって来るのが見えました。
 私が交番へ入り、お財布を拾ったことをお
巡りさんに説明していると、
「財布をなくしました」と、先ほどの若い男
の人が交番に入って来ました。
 中身のカードやら、免許証から、私が拾っ
たお財布はこの男性の物だとすぐに判明しま
した。
 簡単な届け書きを書いて、交番を出ると、
男性はお礼がしたいと云って、私を食事に誘
ってきました。
 私は断りましたが、男性がそれでは困ると
言って、一歩も後を引く気配がありません。
 気の弱い私はここでも、男性の誘いを断れ
ず、「少しなら」と、モール街にあるレスト
ランで食事をしました。
 気のせいか、この若い男性は、先ほどの女
性店員と顔が似ています。
 食事をしながら、「兄妹で、ここで働いて
いますか?」と聞いてみたら、
「一人っ子だから、妹はいませんよ」と言わ
れてしまいました。
「ワインをどうですか?」と勧められ、ワイ
ンを飲む私。
        ・・・
 気づいてみると、ベッドの中に居ます。
《え?なんで私はベッドに寝ているの?そう
いえば、ワインを飲んだ所までは記憶がある
んだけど……》
 その後が、どうしても想い出せません。
 体は一糸まとわぬ、全裸に毛布一枚で寝て
います。
《あれ?服を着ていない?》
 わたしは何がなんだか、わからなくなり、
パニック状態です。
 股間に違和感はありませんでした。
 まだ、何もしていないようです。
 若い男性がお風呂のシャワーを浴びて、腰
にバスタオルを巻いたまま、出てきました。
「目が醒めた?いやー、驚いたよ。君が急に
お店の中で服を脱ぎ出すもんで、慌てて君を
なだめすかして、車へ載せ、このホテルへ連
れて来たんだ」
「え?私、そんな事はしません!」
 私は真っ赤になり、男に向かって必死に抗
議したが、男は冗談は止せと言った顔で、
「おいおい。君はホテルのこの部屋に入るな
り、暑いと云って、自分で服を脱ぎ全裸にな
って、そのベッドで寝ちまっ
たんだぜ」
「嘘です。わたし!そんな事はしませ!!」
「おいおい」
 男は参ったと云った表情でほくそ笑んで、
ベッドの私を見下しています。
 私は毛布をまとい、ベッドから起きると、
急いで服を着て、部屋から出ようとしました。
        ・・・
 ここで、「はっ」として目が醒めました。
 車の運転席で寝ていたようです。
 またまた、変な夢を見てしまいました。
 どうも、このモール街に来てから、変な淫
夢を見るようになりました。
 今日の所はひとまず、社へ戻って、明日、
もう一度来ることにしました。
        ・・・
 次の日、モール街に来て、最初に取材した
お店を確認してみることにしました。
 だけど、その場所に、在るはずのお店があ
りません。
 場所を間違ったのかと思い、再度確認する
も、間違いありません。
 隣のお店の人に聞いてみました。
「あのう。ここにブティックがあったはずで
すが?」
 店員は不思議そうに言いました。
「そこにお店なんかありませんよ。そこは最
初から、ずっと空いていますよ」
 それを聞いて、私の背筋に悪寒が走りまし
た。
 今日の所はひとまず、社に戻ってみること
にしました。
 社へ戻って、インターネットでモール街の
場所を調べてみると、そこは、その昔、赤線
と言われ、遊郭が軒を連ねる場所だった事が
解りました。

 その昔、遊郭の女郎と言われる娼婦が、客
の男と駆け落ちをする。
 すると、女郎は廓者といわれる男達に捕ま
り、丸裸にされ、麻縄で逆さ釣りにされます。
そして、風呂桶の水に漬けるという拷問が日
常茶飯事に行われていたようです。
 この過酷な拷問で、亡くなった女郎も数知
れず。
 戦後、赤線は無くなりましたが、その後、
個室付特殊浴場として、この近辺の性風俗の
場所として栄えていた事は皆さんも記憶に新
しいと思います。
 20年程前の出来事として以下の様な記事
が地方紙の片隅に載った事があったようです。
 ソープ嬢に惚れた男が足繁くソープランド
に通い、サラ金などの借金がどうにもならな
い程膨れあがりました。
 男はサラ金からの過酷な取立てに日夜遭っ
ていました。
 男はソープ嬢と無理心中を計り、血だらけ
の男と女が浴室の中で死体で発見されたと言
うものです。
 新風営法の規制と共にこの辺一体はモール
街となり、新しく生まれ変わりました。
 しかし、江戸時代からの長年の因縁が祟り、
恨み、つらみを抱える邪悪な霊魂が、この土
地に暮らす者へ様々な災いを与えて来たよう
です。
        ・・・
 わたしは危うく、夢魔達の陥穽にはまる所
でした。
 隣のお店のご主人と良くお話をして、ブテ
ィックがあったと誤認識させられた箇所の供
養をお寺さんにお願いしました。
 供養をしたその後は、変な夢を見ないよう
になりました。

 如何でしたか?お盆月にふさわしいお話だ
ったでしょうか?
 ほら、あなたの身近な所にも、ミステリー
ゾーンが……。
 うふふふ……。


              おわり。

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