2009年9月9日水曜日

極道日記(7)

 怪しい身なりの女装した男が4人も大挙し
ておしかけたので、美湯ママは少し驚いた。 
 お客さんには変わりがないので、平静を装い、
接客した。
 最近、近所にオカマバーできたかしら?と
思いながら、聞いてみた。
「あの?お客さま?今日はどちらのお店から、
おいでですか?」
 四人の中では、ひときわ、体のごつい、ひ
げ面のオカマが、少しどぎまぎしながら答え
た。 「店?あ!?お店ね……。えーと……。
クラブ、『オロオロ』っていうお店なの。
 俺、あ、いや、あたしは、裸婦裸子って言
います。どうぞ、よろしく。そして、こっち
が……、竹部子。で、こいつ…違った。この
子が用助子。そして理恵男子です。よろしく
ね」
 美湯ママは名前を聞いて、ぷっと吹きそう
になったが、こらえた。
 変な名前ばかりね。
 それにしても、女装はしているけど、どう
みても、男ね。
 近所にオカマバーは出来た様子が無いし、
変だわ?
 美湯ママはあらためて四人を見た。
「いらっしゃいませ」
 干す徒達がやって来た。
「お客様。お飲み物は何になさいます?ドン
ペリなどは如何です?」
 干す徒の一人が言った。
「おう!そうだな。入れてくれ」
 裸婦裸は横柄に言った。
 そこへ、用助が小声で口を挟んだ。
「かしら、言葉使いが男ですよ。もっと、女
らしくしてくださいよ」
「白、ピンク、ゴールド、プラチナとございま
すが、何になさいますか?」
 干す徒が注文を聞くと、裸婦裸は言った。
「そうね……。プラチナを頂こうかしら」
 一瞬、干す徒達はどよめいた。
「お客さま。プラチナを入れていただけるん
ですか?ありがとうございます。当店では、
ゴールドもしくはプラチナを入れて頂いたお
客様には、お姫様だっこをサービスとしてお
ります」「では、失礼」
 そう言うと、干す徒の一人が裸婦裸をお姫
様だっこすると、店内をそのまま走り回った。
 干す徒の体力恐るべし。ごつい裸婦裸を軽々
と抱き上げると、店内をすごい勢いで走り回
った。
 裸婦裸はお姫様だっこされながら、この干
す徒たちとまともに喧嘩したら、勝てないか
もなと思った。
 そして、残りの干す徒達も、三人のオカマ
達を次々とお姫様だっこして店内を走り回っ
た。
 干す徒たちは一通り、店内を走り回って、
もとのテーブルに着いた。
「お客様。本日は当店をご利用頂き、誠にあ
りがとうございます」
 干す徒達は深々と頭を下げて、テーブルに
ついた。
 裸婦裸は『観留を殺ったのは、どいつだ』
と思いながら、干す徒たちの顔を一通り眺め
まわした。
『いっちょ、鎌を掛けてみるか』「ねえ。最
近、この辺も物騒になったわねー。この前は
発砲事件があって。何でも、暴力団の一人が
死んだそうよ」
 干す徒達は顔を見合わせていたが、一人が
言った。
「あー。あの事件ですね。暴力団なんて、社
会のゴミですからね。いっそ、みんな死んで
くれると、助かりますよ。ははは」『こいつ
だな。観留を殺ったのは』裸婦裸は確信した。
 目の前の男は一見、優男風の男だった。
 体力といい、その冷たさといい、人は見か
けによらないものだと思った。
      
 

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