2009年9月9日水曜日

たっくんの完全なる飼育(1)


 『たっくんの完全なる飼育』

         ようこ

 この物語はわたくしの懺悔の記録です。
 ここに登場する、たっくんの人生の半分を
奪ってしまったのですから……。

    ……

 この物語に登場する人物及び団体は架空の
ものです。実在の人物および団体とは一切関
係ありません。

   登場人物

 たっくん ━━ 飄々とした、何処にでも
いそうな、これといった特徴の無い、普通の
青年。

 別区 檻 ━━ 檻商店の八百屋のおやじ。
 別区 栗 ━━ 八百屋のおかみ。

 苦俺 釜美 ━━ 近所のおばさん。

 来流 信 ━━ たっくんの友達。

 序衿 理恵 ━━ たっくんの彼女。

 ようこ ━━ たっくんの人生を奪った女。

  第一章 標的

 繰り返される、つまらない日常。
 朝、起きて、仕事をして、家に帰り、ご飯
を食べ、お風呂に入り、寝る。
 家と仕事場の往復の毎日。
 あたしは、こんな生活に飽きあきしていた。
 こう言うと、男にもてない、ドブスの女に
思うかも知れない。
 自分で言うのも何だけど、街で何度か軟派
されたこともある。
 これでも、一年前は付き合っていた彼氏が
いた。
 その男とは結局、別れちゃったけど。
 理由?聞きたい?
 理由は簡単、その男がひどいマザコンだっ
たから。
 お互いに付き合い始めて一年位の時に結婚
しようとなったんだけど、彼のお母さんの反
対にあって、「君とは結婚できない」だって。
 そんな男は、こっちの方が願い下げだ。さ
っさと別れた。
 傷心のあたしは、男には何の期待も持てな
くなっていた。
 世間の男を見ても、何の感慨も無かった。
 そんな、ある日、橋の欄干にもたれ掛かっ
て、ぼーっと川を見ている青年が眼にとまっ
た。
 すれ違いさまにその男の子をちらっと見た
けど、これといった特徴は無く、何処にでも
いる、普通の男の子といった感じかな。
 歳の頃は二十歳になるか、成らないかって
いう処かしら?
 あくる日も同じ時間に、その男の子は居た
。やはり、ぼーっと川を見ている。
 そのとき、あたしは、何故か知らないけど、
無性にこの子を飼ってみたいという衝動に駆
られた。
 丁度、子猫を飼うように、この男の子を飼
ってみたいという思いが、あたしの胸の中に
沸き起こった。
 あたしは、物陰に隠れて、男の子を見てい
た。
 しばらくすると、男の子は欄干を離れて歩
き出したから、あたしは気づかれないように
後を付けた。
 男の子はその橋から程近い、アパートに住
んでいた。
 アパートに入る男の子を見届けて、あくる
日も同じ時間に橋の所に行ってみると、やは
り、居た。
 思いきって、声を掛けてみた。
「君、ここで何をしてるの?」
 若い女の子に不意に声を掛けられて、びっ
くりしているようだった。
「え?僕ですか?別に」
 以外とそっけない返事が返ってきた。
 そう言うと、男の子は、また、視線を川に
戻した。

 

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