2009年9月9日水曜日

極道日記(14)

「やりやがったな!」裸婦裸の怒声を合図に
両者が睨み合った。

 両者とも睨みあったまま、永遠とも思える
長い沈黙が続いた。
 沈黙を破ったのは、美湯に肩を撃ちぬかれ
た竹部だった。
「うぉー!」と言う唸り声と共に、日本刀を
振りかざして、美湯ママめがけて突進して行
った。
 とても、肩を怪我している男には見えなか
った。その形相は鬼神のようであった。
 竹部は狂犬が疾駆するが如く、美湯めがけ
て猛然とダッシュした。
 だが、既に武器を構えている干す徒達の格
好の餌食となってしまった。
 ダダダダダダッ!
 日本刀を振りかざして疾駆する竹部めがけ
て、干す徒がマシンガンを撃ち放った。
 裸婦裸はスローモーションを見ているよう
な錯覚に捉われた。
 機銃が放つ銃弾の嵐に翻弄され、まるで、
めちゃくちゃなダンスをしているような、竹
部を見た。
 マシンガンの銃弾により、強制的に死のダ
ンスを踊らされた竹部は、やがて事切れて、
どさっと床に崩折れた。
「竹部!」裸婦裸は床に崩折れた竹部を見て
短く叫んだ。「ヤロー!」裸婦裸は拳銃を乱
射しながら、干す徒めがけて突っ込んだ。
 これをきっかけてとして、両者の睨みあい
の均衡は崩れた。
 うおーっと言う、喚き声と共に両者は入り
乱れて、乱闘となった。

   ・・・・

 付近の住民が通報したのか、パトカーのサ
イレンの音が近づいて来た。
 サイレンの音を聞きつけて、現場は蜘蛛の
子を散らすように、人が居なくなった。
 何人かの干す徒と檻々組の組員が床に転が
っていた。
 Dear風呂と檻々組の両者は多大な犠牲を払
った。
 自らも負傷した裸婦裸と数名の組員は事務
所に戻って、檻に報告した。
「おやっさん。竹部は死にました。その他、
10数人の組員も殺られました。敵の奴らを
10数人ほど殺りましたが、美湯は殺りそこ
ねやした……」
「そうか……」
 裸婦裸の報告を聞いた檻は目を瞑って、沈
黙した。
 それを見て、姉御が言った。
「あんた、何を考えてんのさ?この機会にい
っきにDear風呂を潰して、おしまいよ」
「バカヤロー!」沈黙を破って、檻は怒鳴っ
た。
「戦争するばかりが能じゃねー。ここらで、
手打ちといくか」
 神妙に言う檻を見て、裸婦裸は腑に落ちな
かった。死んで行った、観留、理恵男や竹部
はどうなるんだ?俺はこのままでは引き下が
らねーぞと思った。
「おやっさん。それはあまりにも安易すぎや

しやせんか?死んで行った仲間はどうなんね
ん?!」「何だ?裸婦裸。俺の命令が聞けねー
って言んか?」
 檻は低いドスの効いた声で言った。
「おおーよ!いくら、おやっさんの命令でも

こればっかりはきけねー!俺ぁ一人でもやる
ぜ」
「ばかやろう!てめえは破門だ。出てけ」
 裸婦裸はあっさりと破門されてしまった。
 
 事務所を去り、自宅で酒を飲みながら考え
た。
 俺の人生は何だったんだ?組の為、尽くし
てきた、この半生はいったい何だったんだろ
うか?
 組を破門され、裸婦裸は自分に誓った。
 俺は一人でも、Dear風呂を潰す。やってや
る。俺の残りの人生は今、無くなった。
 どうせ、無い人生だ。思いっきり暴れてや
る……。

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