2009年9月9日水曜日

極道女医『釜美』(3)

 釜美は地元の進学校へ入学し、二年生に成
っていた。
 その間、友達も出来た。だが、中学の時の
ように、グループを作り、群れで行動するこ
とは無かった。
 進学校の為、中学の時に居た様な不良グル

プも存在しなかった。
 だが、釜美はこの時、自分では意識しなか
ったが、知る人ぞ知る、裏スケバン的存在に
為っていた。
 釜美の一声で大勢の人が集まった。
 文化祭の実行委員の時も釜美の采配で大勢
の人間が動いた。
 他校の生徒にも釜美の存在は知れ渡ってい
た。
 
 釜美は二年生に成って、美術部の部長にな
った。
 三年生は受験の為、部には来なくなった。
 何時ものように放課後、美術室で絵を描い
ていた。
 人のデッサンをしていたが、どうも物足り
ない。ミケランジェロのダビデ像のような裸
の男性を描きたかった。
 釜美は歳の割りには、男の裸は見慣れてい
た。組の者が裸で事務所の中をうろうろする
のは日常茶飯事だ。
 しかし、同年代の男の子の裸は見た事が無
かった。
 どうしても、若い男の子の裸が描きたかっ
た。
 釜美は同じ美術部の一年生の男の子に部長
権限で命令した。
「ちょっと、高部君。こっち来て」
 呼ばれた男の子は何だろうと思いながら、
びくびくしながら、釜美の元へ行った。
 釜身には、ある事無い事、尾ひれが付いて
いろいろな噂が飛び交っていた。
 そんな訳で、一年生は皆、釜美の事を多少
なりとも、恐れていた。
「はい。何でしょうか?部長」
 高部は恐る恐る聞いた。
「君ね。ちょっと、服脱いで、そこに立って
くれない?」
 釜美は事も無げに言った。
「え?部長、今、何て言いました?」
 高部は聴こえたのか聴こえなかったのか再
度、聞いてきたので、今度はゆっくりと、は
っきりと言ってあげた。
「服を全部脱いで、そこへ立って頂戴」
 高部はびっくりした顔で「ええーー?服を
脱ぐんですか?全裸ですか?」と云った。
 釜美は表情一つ変えず事も無げに「そ」と
云った。
 高部は両手をオーバーに振りながら「部長

それは勘弁してくださいよー」と拒否してき
た。
 釜美はジロッと高部を睨んで「あたしの言
う事が聞けないの?」と云った。
 高部はその一言ですくみ上ってしまった。
「部長、全裸は勘弁してくださいよー」と泣
き顔で言った。
「じゃー、仕方ないわね。全裸は勘弁してあ
げるから、代わりにこれ着けて」と、バッグ
の中から、褌を取り出した。
 組の者から、今朝、借りて来たのだ。
 それを見た高部は、恥ずかしそうに、褌を
受け取った。
「これ、褌じゃないですかー?」
「そうよ」と釜美は云い「まさか、これもダ
メっ
て言うんじゃないでしょうね?」と凄みを利

せて云った。
 高部は渋々、「わかりましたよ。これ、着
ければ良いんでしょう」と言いながら、部屋
の隅へ行き、服を脱ぎ出した。
 他の部員はこのやり取りを固唾を呑んで見
守っていた。
 釜美は部員に言った。
「さー、みなさん。高部君がモデルに成って
貰えるようです。はりきって良い絵を描きま
しょうね」と、云う成り、高部にポーズを指
示すると、早速、キャンバスに向かって下絵
を描き始めた。

   ・・・

 釜美は二年生の頃から、文化部の全実権を
握っていた。三年生の生徒会長も釜美には一
目置いていた。
 そんな、釜美を疎ましく思う人間も少なか
らず居た。
 この時、釜美に魔の手がひたひたと押し寄
せている事を本人は知る由も無かった。

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