2009年9月9日水曜日

極道日記(5)

 第二章 「果てしなき抗争」

 自らも足に銃弾を受けた信は、瀕死の観留
を抱きかかえ、店に戻った。
 店内はざわざわとしていたが、異様な二人
の様子を見て、静まり返った。
 「キャー!観留さん!?」
 血だらけの観留を見て、利美は失神した。 
 八ちゃんは利美を抱きかかえて、奥の部屋ま
で、連れて行った。
 「干す徒にやられた。いきなり弾きを撃って
きやがった。ううぅ……。」
 信は観留を床に寝かすと、自らも床に崩お
れた。
 「おい!観留!しっかりしろ!」
 信は観留の頬を叩いたが、反応は無かった。
 「観留さん!しっかりして!」
 栗ママは観留に話しかけたが、やはり、反
応は無かった。
 「救急車よ。救急車呼んで!」
 栗ママは阿笛美にそう言うと、観留の腹部
にタオルを当てたが、見る間に真っ赤になっ
た。
 やがて、観留の呼吸が微かになり、ふっと
消えた。
 「観留さん!観留さん!」
 栗ママの鳴き声に似た悲痛な叫びが店内に
響いた。
 「観留!死ぬんじゃねー!」
 信の叫びは、もはや、観留には届かなかっ
た。
 「うわーん」
 店内にキャバ嬢達の鳴き声が充満した。

      ・・・・

 「やってくれるわね。Dear風呂組。」
 カフェのカウンターに座って、ネイルケア
をしながら、いまいましそうに、釜美は言っ
た。
 「こんな仕打ちを受けて、見過ごしていては
檻々組は腑抜けばかりかと、世間に示しがつ
かんわなぁ。」
 若頭の裸婦裸は拳銃を取り出し、磨き始め
た。
 檻々組の裸婦裸と言えば、極道仲間からは
阿修羅の裸婦裸と言われ、恐れられていた。 
 普段は物静かな男だが、一旦、暴れ出したた
ら、誰も手を付けられない程の暴れようから、
この異名が付いた。
 「なぁ。いっちょ、Dear風呂組に挨拶、かま
したれや!」
 組長の檻は不快そうに言った。
 「そうやな。ここらで、いたずらっ子には灸
を据えんとなぁ」
 裸婦裸は拳銃を構え、「パーン」と口で言
いながら、銃を撃つマネをした。

     ・・・・

 裸婦裸は構成員の用助、竹部、理恵男を従
えて、ディア風呂へ向かった。

     ・・・・

 ここで、ちょっと、構成員の紹介をしたい
と思います。
 まずはトップバッターは狂徒用助。
 血気盛んな若者である。
 仲間数人と「一着男組」なる愚連隊を作り、
そのリーダーとなり、夜な夜な街中をうろつ
いていた。
 町のゴロツキだった、この血気盛んな若者
は、たまたま、檻の経営するカフェに入った。
 そして、檻の男気に惚れ、極道の世界へと入
っていった。

 お次は、竹部朗愚。
 この男は、ひょうひょうとしていて、一見、
極道には似つかわしくない男である。
 だが、その実態は前科十犯。「狂犬の竹部」
として、これも、極道世界では有名人物であ
る。

 最後は序衿理恵男。
 栗ママの弟である。
 理恵男が高校生の時、両親を一夜にして、
交通事故で失ってしまった。
 その時、姉の栗は女子大生だった。
 遠い親戚の檻が御通夜に来て、その後、こ
の姉弟の世話を何くれとみていた。
 理恵男はお世話になった、恩人である檻に
憧れ、極道の世界に入ってしまった。
 姉の栗は弟には全うな堅気の社会人になっ
て欲しかったのだが……。

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