2009年9月9日水曜日

極道女医『釜美』(6)

 釜美の奇襲に失敗した鯛弐組のチンピラ達
は鯛弐礼子に報告した。
「お嬢。申し訳ありません。この体たらくで
す」と釜美に折られた腕のギプスを見せた。
「だらしないわね。それで、逃げ帰って来た
って訳?」
「お嬢、それが、あのアマ、強いのなんのっ
て。まともに太刀打ち出来やせん
ぜ」
「釜美は合気道をやるらしいけど、本当
のようね。わかったわ。作戦を変えましょう

 礼子は栗子に携帯で電話した。
「あ、栗子。あたし、礼子。組の者が釜美に

けちょんけちょんにやられたけど、このまま
では収まらないわよ」
「ううん。もう、良いの」
「え?何?良いって?ふざけないでよ」
「もう、いいの」
「何言ってるのよ。解かってるの?このまま
では収まらないわよ。栗子も覚悟しなさい」
「え?あたし……」
「組の者がやられて、はい、そうですかと、
引き下がる訳にはいかないのよ!栗子にも
手伝って貰うからね!」
 そう云って、礼子は電話を切った。
 礼子は腹の虫が納まらなかった。
 もともと栗子に頼まれて始めた事だったが

暴阿組とは因縁の対決だと思っていた。

 二日後、礼子は、一人で栗子の家の玄関の
前に立っていた。
「ピンポーン」
 玄関のチャイムを鳴らすと、栗子の母が出
てきた。
「栗子さんいますか?」と云うと「栗子~。
お友達よ~」という栗子の母の声がして、栗
子が玄関口までやって来た。
 栗子は礼子を見て、嫌な顔をしていた。
「栗子。ちょっと、そこまで、顔かして」
 渋い顔をしている栗子を近くの喫茶店に誘
い出した。
 
「いい?釜美を誘い出して、これを飲ませるのよ」
と、薬袋を渡した。
「何?これは?」薬を見て、栗子は不審そう
に聞いた。
「粉状にした、睡眠薬よ。飲ませた後はあた
し達に任せればいいわ」
「いや!」っと栗子は薬を投げ出した。
 礼子は薬を拾うと、「ばしっ」と栗子の頬
を叩いた。
「ふざけるんじゃ無いよ!わかってんの?も
う、後には引けないんだよ!」
 礼子が凄むと、栗子は叩かれた頬を左手で
抑えて、小さくなった。

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