2009年9月9日水曜日

極道日記(19) 最終回

 吹き飛んだ玄関をめがけて、裸婦裸は更に
ショベルカーを前進させた。
 バリバリバリッ
 ミサイルによる破壊でメチャクチャに成っ
た玄関口をショベルカーは突き進んだ。

 檻組長は酒を飲みながら、2階の宴会場で、
Dear風呂組の幹部と談笑していた。
 突如、もの凄い音ともに、家が揺れた。は
じめ、地震かと思ったが、どうも、そうでは
無いようだ。
 宴会場の外が騒がしい。
 慌てて、2階の手摺越しに階下のホールを
見ると、驚いたことに、ショベルカーが屋敷
の中へ入って、ホールを縦横無尽に破壊して
いるではないか。
 ショベルカーに乗っているのは、何者だと
思った。2階から、目を凝らして、見て、驚
いた。
 なんと、組を破門した、裸婦裸だった。
「あの野郎!何やってやがんだ!」
 地団駄を踏んで、檻は悔しがった。
 横に美湯が来て、檻に向かって、怒鳴った。
「何なのこれは!あれは、あなたの所の、裸
婦裸じゃないの!謀ったわね!」
 檻はおろおろしながら弁解した。
「いや、違う。あの野郎はとっくに破門した。
今は組の者じゃねー」
美湯はいらついたように言った。
「どうして、破門された人間があたし達に牙を
向いてんのよ!」
 あまりの美湯の怒気に気おされて、檻は更
におろおろした。
「そ、そんな事、俺に言われてもなぁ」
 美湯はそんな檻を見て、呆れたらしく、
「あなた、それでも、組長なの?もー、話に
なんないわ」と言うと、奥の部屋へ行き、機
関銃を持ってきた。
 美湯は機関銃を構えると、下でショベルカー
を縦横無尽に走らせている裸婦裸めがけて引
き金を引いた。
 ダダダダダダダッ
 銃弾はショベルカーめがけて、雨のように
降った。
 ブシュッ!
 銃弾の一発が裸婦裸の肩に当たった。
 だが、しかし、防弾チョッキが、その一発
を防いだようだ。
 裸婦裸は素早く、ショベルカーから降りて、
銃弾の嵐を避けた。
「ちっ。ショベルカーの影に隠れたわ」
 美湯は悔しそうに言うと、檻に機関銃を渡
した。
「元はあんたん所の者でしょ。あんたが始
末しなさいよ」
 美湯から、機関銃を突きつけられ、仕方な
しに受け取った。
「俺がやるのか?」
 実は機関銃の扱いを知らないのだが、仕方
ない。こうなったら、成るように成れと思っ
た。
 バリバリバリッ
 裸婦裸がショベルカーを楯にして、自動小
銃で応戦して来た。
「ひ~~!」
 檻は驚いて、機関銃を放し、両手で頭を覆
い、その場にうずくまってしまった。
「だ、誰か、居ないのか?組の者はどうした?」
 周りを見ると、誰もいない。さっきまで、横
にいた美湯も居なかった。
 殆どの人間が退散してしまったようだ。
 今や、その場所に残されたのは、裸婦裸と
檻組長だけだった。
 裸婦裸が、小銃を構えて、階段を昇り、ゆ
っくりとこちらへやって来た。
「おやっさん。いや、檻さん。俺は、つくづ
く、あんたを見損なったよ」
 裸婦裸は煙草を吸うと、苦やしそうに言っ
た。
「またもや、美湯を逃してしまった。俺はし
ばらく、身を隠すとするよ」そう言うと、悠
然と去って行った。
 残された檻は、その場にへたり込んだまま、
唖然としていた。
 遠くにパトカーのサイレンの音が聞こえて
きた。


              おわり

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