2009年9月7日月曜日

丑三つ時

   「丑三つ時」

            ようこ( ̄ー ̄)v


 連日の猛暑日が続く関東地方の夜は、蒸し
暑く、寝苦しい夜が続いた。
 《ようこ》は今日もPCの前でパジャマ姿
のまま、夜遅くまでインターネットでセカン
ドライフをしていた。 明日は休みなので、
夜遅くまでネットが出来ると思っていた。
 しかし、連日の疲れからか、いつもの寝る
時刻になると、睡魔が襲ってきた。
 今日はもう、寝ようと思い、PCの電源を
落とし、二階の寝室の窓を全開にして、カー
テンを閉めて寝た。
 暑かったが、窓からは秋の気配が漂う、涼
しい風が時折、入ってきた。
 程なく、ようこは気持ちよく、眠りに就い
た。
 ふいに、窓の外から、ガラガラと何か、大
八車を引くような騒々しい音が聞こえて、目
が覚めた。
 気がつくと、びっしょり、寝汗をかいてい
た。
 枕元の目覚まし時計を見ると、午前2時5
8分だった。いわゆる「丑三つ時」といわれ
る時間帯だ。
 この時間帯は昔から魔の刻と言われ、魑魅
魍魎が跋扈する時間帯だ。
 ようこは何か嫌な予感がした。
 蒸し暑いので、カーテンを開けようとして、
ベッドから起き上がった。
 窓に近づくと、なぜかカーテンを開けるの
が躊躇われた。
 カーテンの外には魑魅魍魎が居て、カーテ
ンを開けたら、ようこに襲い掛かってくるよ
うな気がした。
 しかし、思いきって、カーテンを開けた。
 《ジャッ》
 カーテンを開けた《ようこ》は絶句した。
 そこには、普段見慣れた光景は無かった。
 あるはずのお向かいの家が無い。お隣の家
もない。近所の家が一軒も無いのだ。
 そこには、畑ばかりが延々と続く広大な平
野が続いていた。
 その平野には、ようこの家の脇を通る、ず
っと続く1本の道と、ようこの家だけが在る
状態だ。
 先ほどの騒々しい音は何だったのだろうか?
 狐に摘まれたような状態で、寝ぼけ眼を擦
りながら、階段を降りた。
 階下には家族が寝ている。懐中電灯を持って、
そっと、玄関の扉を開け、外に出てみた。
 街灯は家の横の電柱に付いている1本があ
ったが、今は点灯していなかった。
 周りは真の闇に包まれている。
 懐中電灯を点けて、周りを見渡してみるが、
闇が続き、虫の鳴き声が聞こえるだけだ。 
いったい、何が起きたのだろうか?
 呆然としていると、何か向こうから、騒々
しい音を立てて近づいてくる。
 良く見ると、大八車を引いている男が凄い
勢いでこちらに近づいて来た。
 男はそのまま、ようこの脇を通って、向こ
うの方へ行ってしまった。
 懐中電灯に照らされた男の格好は、褌姿に
チャンチャンコのような物を着て、捻り鉢巻
をしていた。靴は履いていなくて、草鞋を履
いていた。
 やがて、男は闇に吸い込まれて、ようこの
視界から消えた。
 ふいに我に返ると、全身から悪寒が起き、
ガタガタと震えた。
 急いで、玄関から家の中に入ると、鍵を閉
め、二階に上がって、ベッドに潜りこんだ。
 何がなんだか、わからない。あたし、頭が
おかしく成ったのかしら?それとも、夢?
 頬をつねってみたが、痛い。夢ではないよ
うだ。
 そのまま、ようこは、また、眠ってしまっ
た。
 
 チュンチュン。すずめの鳴き声で目が覚め
た。外は既に明るい。
 ベッドから起き、恐る恐る、窓の外を見る
と、そこには、普段の見慣れた景色があった。
 《あれは何だったのかしら?疲れて、きっ
と、夢を見たんだわ》
 

                             
終わり。

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