2009年9月9日水曜日

極道女医『釜美』(1)


  極道女医『釜美』
             ようこ

 この物語は数奇な運命に翻弄されながらも
強く生きる、ある女の一生を綴った物語であ
る。
    ・・・・

 物語に登場する人物及び団体は架空のもの
です。実在の人物および団体とは一切関係あ
りません。

   主な登場人物

 苦俺 釜美 ━━ この物語の主人公。極
道一家の孫として生まれ、数奇な運命に翻弄
される女

 苦俺 釜地 ━━ 釜美の父

 苦俺 はじめ ━━ 釜美の母

 別区 檻 ━━ 三宮医科大学付属病院の
院長

 来流 信 ━━ 三宮医科大学付属病院の
実習生

 阿笛美 ━━ 三宮医科大学付属病院の看
護士

 理容子 ━━ 三宮医科大学付属病院の看
護士

 暴阿 観留 ━━ 暴阿組の組長

 暴阿 やち子 ━━ 観留の妻

 老楠 羅府羅 ━━ 暴阿組の若頭

 鯛弐 礼二 ━━ 鯛弐組の組長

 竹部 朗愚 ━━ 鯛弐組の構成員

 序衿 栗 ━━ 薄幸の少女

 序衿 理恵男 ━━ 栗の父

 序衿 ようこ ━━ 栗の母

 序衿 理恵 ━━ 柔術家

   主な団体

 三宮医科大学付属病院
 その名の通り、私学の三宮医科大学の付属
病院。
 理事長である別区檻が自ら創設した病院で、
院長を兼務している。

 暴阿組
 組長は三代目の暴阿観留。初代は神戸の港
湾荷役の仕事から始まり、その手腕に次第に
人が集まり、暴阿組となった。
 現在の暴阿組は警察のマル暴対策により、
次第に衰退しつつある。
 この物語の主人公である苦俺釜美は三代目
暴阿観留の孫娘である。

 鯛弐組
 組長は初代 鯛弐礼二。
 三宮を中心として、出て来た新興の組織。
 組長自らもそうであるが、構成員の身長が
小学生並みに、皆一様に低い。
 この組織に入る為には、身長が1メートル
以下というのが絶対条件である。


 第一章 釜美誕生

 釜美は暴阿観留の一人娘『はじめ』の第一
子として誕生した。
 この世に生まれ出た瞬間にこの子の数奇な
運命は始まった。

 観留の娘のはじめは、やくざである父を子
供の頃から、とても恥ていた。
 成長して成人となってからも、それは変わ
らなかった。
 観留は、はじめに、事ある毎に、早く結婚して、
組の跡継ぎを生んで欲しいと云う様な事を言
っていた。
 はじめは自分の子供には組の後を継がせる
気など、毛頭無かった。
 はじめは商社に入社し、同僚の苦俺釜地と
恋に落ちた。そして、やがて、結婚しようと
成った。
 しかし、観留の反対にあって、駆落ち同然
に家を出て、苦俺と同棲生活を始めた。
 やがて、はじめは妊娠し、二人にはかわい
い女の子が誕生した。
 赤ん坊が出来たと同時にはじめは入籍した。
 頑固に反対していた観留も赤子が出来たの
ではしょうが無いと、この頃、やっと二人の
結婚を認めた。

 共働きの二人は釜美を母のやち子に預けて、
夕方、引き取りに来るという生活を続けた。
 やがて、小学生と成った釜美は学校から帰
ると、暴阿組の組員を相手に遊ぶという日々
を送っていた。
 いつも大人を相手に遊んでいるので、お転
婆で、ませた小学生に成っていた。
 小学校では、いつもリーダー的存在で、け
んかでは男の子にも負けた事が無く、男の子
にも一目置かれていた。

 そんな、ある日、授業を終えて、釜美が組
に帰ってみると、何時もの組の雰囲気では無
い何か慌しいものを小学生の釜美は感じた。
 この日は、新興の暴力団、鯛弐組との出入
りが始まった日で、組の中はざわざわしてい
た。
 鯛弐組とは、三宮を中心に出て来た新興の
暴力団で、神戸を中心とする暴阿組とは、事
ある毎に衝突していた。
 鯛弐組は全国でも珍しい暴力団で、組長を
はじめとして、皆、小人である。
 組員は元サーカスの団員だったり、プロレ
スの前座のちびっ子レスラーだったりしてい
る。
 
 出入りが終わり、暴阿組の組員が帰ってき
た。皆、それぞれ、多少なりとも負傷してい
た。
 中でも重症だったのが、若頭の老楠羅府羅
で、腹に銃弾を受けて、大量の血を流してい
た。
「羅府おっちゃん、どうしたの?お腹痛いの?」
 釜美はお腹から血を流す羅府羅を見て、泣
きながら云った。
「お嬢。大丈夫だ、おっちゃんはこのくらい、
何ともねー」と羅府羅は歯を食いしばりなが
ら呻くように云った。
「うわーーん。おっちゃん!」
 組員は「さ、お嬢」と云って、泣きながら、
羅府羅に縋る釜美を引き離すと、羅府羅を車
に運んだ。羅府羅はその後、病院で帰らぬ人
となった。
 釜美はこの時から、小さいながらも、将来、
お医者さんに成って、怪我している人を助け
るんだと決意した。

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