2009年9月19日土曜日

霊感修学旅行(2)

「血天井っていうのはねぇ。あるお寺さんに
ある天井板の事なの。その天井板には足跡と
か、手の跡とかのシミが付いているのよ」
「なぁんだ、シミか。つまんないの。で、そ
のシミを見に行きたい訳?」由美子が呆れた
ようにいうと、夏子はむっとしたように「そ
れが、普通のシミじゃ無いのよ。このシミは
人間の血で出来たものなの。戦国武将の血
よ」といった。
「へー。なんで、戦国武将の血が天井に付い
ているの?」由美子は興味が沸いてきた様子
でした。
 みんなは興味深そうに夏子の話を聞いた。
「時は戦国時代。豊臣秀吉が天下を統一し、
平和な時代がやって来たように見えたけど、
秀吉の死後、勢力は徳川家康率いる東軍と石
田光成率いる西軍に真っ二つに分れて、関ヶ
原の合戦になった事はみんなも知っているわ
ね」
 夏子がいうと、みんなはうんうんと首を縦
に振った。
「この関ヶ原の合戦の前哨戦になったのが、
『伏見城の戦い』なの。関ヶ原の戦いの直前
に、家康は上杉景勝討伐に向かったの。それ
で、城のお留守番役として、鳥居元忠以下、
二千名程で伏見城を守ることになったのよ。
 みんなは、鳥居元忠を知らないわね」
 みんな、うんうんと頷く。
「鳥居元忠という武将は家康が今川の人質と
なっていた、子供の頃からの側近の一人なの
よ。元忠は家康の絶対の忠臣と言われている
わ」みんな、ほおほおと頷く。
「お話を戻すとね。家康が上杉討伐に京を出
立すると、これを待ち構えていた石田三成の
軍勢九万が伏見城を攻撃したのよ」
 みんなはうんうんと頷いている。
「鳥居元忠とその部下は三成軍を少しでも長
く京に留まらせ、会津まで援軍に行かせない
ようにと奮戦したのだけど、遂に力尽きて、
落城する際に、鳥居元忠以下380名以上が
自刃したと言われているの。そして、元忠達
の遺骸は関ヶ原の合戦が終わる迄の2ヶ月も
の間、伏見城に放置されていたの」
「ええー?!二ヶ月も?」幸江が気持ち悪そう
に、顔をしかめて聞いた。
「そうなの。遺体からの血痕や顔や鎧のあと
が縁側の板に染み付き、いくら拭いても洗っ
ても落ちなくなったといわれているのよ。そ
れで、血の付いた廊下の板は自刃した武士た
ちを弔う意味で、お寺の天井板にはめ込んだ
のよ。この床板は五つのお寺に分けて、天井
板として供養されているの。
 そのお寺が京都にある、正伝寺 源光庵 
養源院 宝泉院 興聖寺というお寺で、血天
井として、供養されているのよ」
 あまりの夏子の歴史おたくぶりにみんなは
「へー」という顔で夏子を見た。
「で、その血天井巡りをしたい訳?夏子は」
 由美子がやれやれと、両手の平を上に向け
て開いた。
「そうなの。だめ?」夏子が探るようにみん
なを見回した。
「そうねぇ。なんとなく、興味が沸いてきた
わね。行ってみる?」私がいうと、夏子は行
こうよ、行こうよと、みんなを説得した。
「血天井巡りだけじゃ、つまんないから、一
緒に、甘味所巡りもしようよ」由美子がいう
と、みんなは一も二も無く賛成した。
 こうして、血天井巡りが決定し、巡る順番
と日程を決めました。
 京都での自由行動は二日間あるので、日程
初日は、養源院→正伝寺→源光庵→宿として、
二日目は、興聖寺→甘味所巡り、とした。
 残りの一つの宝泉院は遠いので、今回は外
しました。
 日程表を作成し、学校へ提出し、これで、
私達の血天井巡りは、準備万端です。


              つづく

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