2009年9月9日水曜日

極道女医『釜美』(14)

 故・暴阿観留の葬儀も終わり、初七日も過
ぎた、大安吉日に釜美の襲名式が盛大に行わ
れた。
 黒塗りの高級車が暴阿組の広い敷地に続々
と集まって来ている。
 この日は近畿一円の親分衆が続々とお祝い
に駆けつけていた。
 地元の放送局の記者も来て、カメラの前に
立ってマイクを持ち、話していた。
「えー。私は今、指定暴力団、暴阿組の敷地
の前にいます。
 ここには、今朝から、続々と黒塗りの高級
車が集まって来ています。
 普段は平穏な街ですが、今日は警察のパト
カーも数台集まり、周りはものものしい雰囲
気に包まれています。
 まだ、記憶に生々しい、あの暴阿組組長射
殺事件から、数日が過ぎました。一旦、落ち
着いたかに見えた街並みですが、その静けさ
も何処へやら、今日は一転してこの喧騒に包
まれております。
 今から、新組長の襲名式がここ、三宮の暴
阿組の敷地内で行われようとしております。
 この敷地の喧騒とは対照的に近隣の住民は
外出を控えているようです。
 ここで、視聴者の皆様に暴阿組とはいった
い如何なる組織なのかを解説したいと思いま
す。
 先日、暴阿組の組長暴阿観留が、敵対する
鯛弐組の組員の襲撃により、射殺されました。
住宅が密集する路上で白昼堂々と拳銃が発射
されました。
 射殺された組長暴阿観留は三代目です。
 初代は戦後の神戸の港湾荷役の仕事で財を
成し、暴阿組が出来たとされています。
 最盛期の暴阿組の構成員は1万とも1万5
千とも言われています。
 しかし、現在は警察の取り締まりの強化に
依り、減少の一途をたどり、その数は二千人
程だと言われております。
 今日は射殺された観留組長の孫娘の苦俺釜
美と言う人物が四代目を名乗る、襲名式がこ
こ三宮の暴阿組敷地内で行われようとしてい
ます。
 この苦俺釜美と言う人物は一風変わった経
歴の持ち主で、三宮医科大学付属病院の医師
をしているという事です。
 医者が暴力団の親分になるとは、なんとも
変わった世の中になったものです。
 三宮放送局の《カオル》がお送り致しまし
た。では、スタジオの《のぶ》さん、よろし
くお願い致します。

0 件のコメント:

コメントを投稿