2009年9月9日水曜日

たっくんの完全なる飼育(3)

 今日は、これから用事が在るからと、一旦
別れた。

 翌日、あたしは薬局へ行って、睡眠薬を買
った。
 家に帰って、買ってきた睡眠薬の錠剤を全
て、ミキサーの中へ入れて、ガーッと回し、
粉状にした。
 粉にした睡眠薬を元の錠剤の入っていた小
瓶へ戻し、バッグへしまった。
 前に付き合っていた彼とラブホテルへ行っ
た時に、冗談で買った、おもちゃの手錠を押
入れの奥から引っぱりだした。
 引越しの時に使った、麻縄も用意した。
 準備は整った。
 あたしは、ケータイで竹部に電話した。
 トゥルルル。
「はい。竹部です」「あ。たっくん?あたし

ようこ。今、どうしてるの?」「え?家にい
ますよ。ようこさんは?」「あたしも、今、
自宅なんだけど、これから、会えない?」
「あ、良いですよ。何処で会いますか?」
「じゃー、この間の喫茶店はどう?」「いい
ですよ。分かりました。じゃー、30分後に

「うん。わかったわ。じゃーね」
 あたしは、電話を切ると、車で、喫茶店へ
向かった。

 喫茶店に着くと、先に竹部は来ていた。
「お待たせー」
 あたしは席に就くと、大学では何をやって
いるのかとか、彼女のことや、友達のことを
聞いた。
 しばらく、話していたが、竹部を自宅へ誘
う必要があった。頃合を見計らって言った。
「ねぇ、たっくん。あたしん家へ来ない?お
いしい、手作りのお夕飯、ご馳走してあげる
わよ」
 竹部は満面の笑顔で、「ええー?良いんで
すか?」と、言った。
 あたしは席を立った。
「うん、決まりね。じゃー、行こうか?」
 
 喫茶店を出て、竹部を車の助手席に乗せ、
自宅へ向かった。
 まだ、昼の三時頃だというのに、外は鈍よ
りと曇っていて、既に夕方のように薄暗かっ
た。
 これから竹部に起こる不幸な出来事を、暗
示しているような天気だった。

 車は家に着いた。竹部を降ろし、玄関の扉
の鍵を開けて、中に入った。
「ささ、入って」
 竹部を家の名へ招き入れた。
 竹部は部屋に入り、きょろきょろと周りを
見ていた。
「へー、ようこさんの部屋って、以外とシン
プルですね」
 あたしの部屋は世間一般の女の子の部屋と
比べると凄くシンプルかもしれない。
 部屋の中の家具も少ないし、お花とか、ぬ
いぐるみとかの生活に関係しない物は、一切
置いていない。
「女の子の部屋じゃ無いみたいでしょ?あま
りに、そっけない部屋で……」
 竹部はぶるんぶるんと、首を横に振りなが
ら、「いいえ。そんなこと無いですよ」と、
言った。
 あたしは性格が捻くれているので、きっと

お世辞だと思った。
「何も無いけど、これでも食べて、テレビで
も見ていて」
 竹部にポップコーンを渡すと、台所に立っ
て夕食の支度をした。
 
 クリームシチューを作った。テレビを見て
いる竹部に気づかれないように、用意してい
た睡眠薬の小瓶をバッグから、こっそりと取
り出した。
 クリームシチューを皿に盛り、少量の睡眠
薬を混ぜた。
 睡眠薬が良く効くように、ワインも用意し
た。

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