2009年9月9日水曜日

極道日記(16)

 釜美は、手打ちの話をつける為、まず、美
湯と会って話し会いをすることにした。
 最初、美湯は釜美からの手打ちの話を拒ん
でいた。
 何度も釜美は電話をした。
 何度か電話をするうちに、やっと、会って
貰えることに成った。
 ただし、条件は釜美が一人でDear風呂へ来
ることだった。
 釜美は護衛の者は付けないで、単身、Dear
風呂へ向かった。

 以前、Dear風呂は雑居ビルの中にあったが

このまえの戦争で、店内はめちゃめちゃにな
ってしまった。
 今は郊外の住宅地の一角にある、平屋建て
の建物に移っていた。
 へー、以外と良い所に住んでるわねと、釜
美は思った。
 玄関の扉には温泉マークがあった。
「ピンポーン」
 玄関のチャイムを鳴らすと、手下の干す徒
が出てきた。
「檻々組の釜美よ。美湯さんに話は通ってい
るわよ」
 釜美が一人であることを確認すると、干す
徒は丁寧にお辞儀をした。
「こちらへ」と言って、釜美を家の中へ招き
入れた。
 奥の部屋に通された。
 奥まった部屋の扉の前で立ち止まり、扉ご
しに干す徒は言った。
「釜美様がいらっしゃいました」
 部屋の中から、透き通った女の声が聞こえ
てきた。
「中へ入って貰って」「こちらへ、どうぞ」
と言って、干す徒は扉を開け、釜美を部屋へ
通した。
 部屋の中には、ゴージャスに着飾った女が
一人掛けのソファー椅子に座っていた。
 女は椅子から立ち上がると、釜美の近くま
で来て、干す徒に目配せした。
「釜美さん。悪いけど、チャカを持っていな
いか調べさせて貰うわよ」
 干す徒が釜美の体に触ろうとした。
「何すんのよ!そんな物、持ってないわよ!

と言って、干す徒の手を払い退けた。
 美湯は鼻でふふんと笑って、言った。
「それもそうね。どうやら、危ない物は持っ
ていないようね。単身で来た度胸に免じて、
信じてあげるわ」
 釜美は、美湯を気に入らない女だと思った

 偉そうにしているが、所詮、風呂屋の成り
上がりの娘じゃないかと思った。
「ところで……、手打ちをしたいそうね」
 美湯が煙草をくわえると、素早く、干す徒
が火を点けた。
「この戦争を終わらせる為には、相当の覚悟
が必要よ。お宅はどんな条件がある訳?」
 美湯は煙草の煙を、ふーっと釜美に向けて
放った。
 釜美はごほごほと咳込みながら言った。
「まぁ?その前に、そちらの条件を聞こうじ
ゃありませんか。おほほほほ」
 話し合いは難航したが、なんとか、話をつ
け、お互いの合意が出来た。
 手打ち式の日取りも決まって、無事、釜美
はDear風呂をあとにした。

 組に帰って、檻に報告した。檻は上機嫌だ
った。
「そうか、良くやった。これで、檻々組は安
泰だ。これからは、心機一転、巻き返しを計
るぞ」
 檻は喜んでいるが、釜美は、どうも面白く
なかった。
 檻に報告したその後で、裸婦裸にも電話で

報告した。手打ち式の日取りと、事の次第を
詳細に話した。
 ことの次第を聞いて、電話の向こうで、裸
婦裸は歯軋りをしていた。
「そうか。姉さん、悔しかったことでしょう

俺は情けないっす。腑抜けの檻おやじとは縁
を切って、もう、組には縁の無い俺ですが、
このままで終わりにはしませんよ!」
 ふーっと一息ついて、釜美は電話を切った

 裸婦裸の憤怒の嵐が、電話越しにびんびん
伝わってきた。

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