2009年9月7日月曜日

予知夢

   「予知夢」(長文注意)

         ようこ( ̄ー ̄)v

 ようこは寝苦しさから、ふと、目が覚めた。
 ようこの家は貧乏で、平屋の安アパートに
家族三人で暮らしていた。
 夏の夜は、いつも、サッシ窓を全開にして、
網戸にして寝ていた。
 ようこの寝ている部屋の網戸の向こうには
道が見える。
 網戸の向こうの夜道は月の明りに照らされ
て、以外と明るかった。
 寝ながら、横を向いて、網戸の外の夜道を
眺めていた。
 すると、道の向こうの方から人がゆっくり、
歩いて来るのが見えた。
《なんだろう?こんな時間に?》
 あたりは寝静まっている時間帯で、物音ひ
とつしない。
 襖の向こうで寝ているお父さんと、私の隣
で妹も、ぐっすり寝ている。
《誰?誰なの?》
 月明かりに照らされたその歩行者をよく見
ると、髪の長い女の人のようだ。
 向かいの道をゆっくり歩いている。
 その女が、不意にこちらを見た。
 女がこちらを見たことで、ようこは、「ぞ
くっ」とした。
《何?なんで、こっちを向くの?早く行って
よ!》
 早く、その女が向こうへ行ってしまえば良
いと思った。
 しかし、女はこちらを見ると、道から、ゆ
っくりと、家の庭に侵入してきた。
《やだ!何でこっちへ来るの?いや!来ない
で!》
 ようこは喋ろうとしたが、恐怖で声が出な
かった。
 女はゆっくりと歩きながら、家の庭に入り、
隣のお父さんの寝ている部屋から進入しよう
としていた。
 ようこは叫ぼうとしたが、声が出ない。お
まけに、体も動かなかった。
 女はいよいよ、隣の部屋に入ってきた。
《お父さん。誰か知らない人が家の中に入っ
て来たよ。早く目が醒めて!》
 しかし、ようこの願いは適えられなかった。
 家族はみんな、何事も無いように、すやす
やと眠っている。
《いやー!》
 ようこは心の中で叫んだが、声が出なかっ
た。
 体は金縛りにあって、ぴくりとも動かなか
った。
 女はとうとう、ようこの寝ている部屋に入
って来た。
 月明かりに、女の髪は濡れているように見
えた。
 何か、ぶつぶつと呟いている。微かに聞こ
える声。
「雨……。雨……。しと……。しと……。雨
……」
 女は<ようこ>の隣までやって来た。
 女の顔が見える距離まで近づいて来た。
 ようこは驚いた。その女は、2年前に他界
した、ようこの母だった。
「お母さん。何?怖いよ。何で、髪が濡れて
いるの?」
 外は雨など、降っていなかった。
 ようこの問いには答えず、女はなおも、ぶ
つぶつと呟いている。
「雨……。雨……。しと……。しと……。雨
……」
「お母さん。止めて。怖いよ!やめて!」
 そう叫ぶと、やっと、体が自由に動くよう
になった。
 体が動くようになって、はっと、起き上が
ると、そこに母はいなかった。
 冷たい汗をびっしょりと掻いていた。
《なんだ。夢だったのか》
 先ほどの恐怖を思い出すと、しばらく、寝
付かれなかったが、そのまま、また寝た。

     ・・・

 それから、三日後、朝からシトシトと雨が
降っていた。
 いつものようにマイカー通勤で家を出た。
 交差点で、横断歩道を人が渡ろうとしてい
た。
 ブレーキを踏んだが、なぜかブレーキがス
カスカだ。
《ブレーキが壊れた!》
 心臓が口から飛び出しそうになった。
《このままでは、人を轢いてしまう!》
 ハンドルを切って、スカスカのブレーキを
力いっぱい、踏んだ。
 交差点を何十メートルも過ぎて、車はやっ
と止まった。
 幸いにも、人を轢かずに済んだ。交通量の
少ない時間帯だったので、自身の車も他の車
に衝突ぜずに済んだ。
《助かった》
 ようこは、「ふーー」と長いため息を吐いた。
 不幸中の幸いだった。
 
     ・・・

 今、思えば、三日前に見た夢は、霊界から、
母が私に警告を与えにやって来たのかもしれない
と思った。


               終わり。

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