2009年9月9日水曜日

極道日記(2)

 筆者はキャバクラ「栗」に何度か行ったこ
とがる。
 ここは美人ママの序衿栗の人柄で盛ってい
ると言っても過言ではない。
 人を飽きさせない、その話術は見事である。
 そして、ちいママの八ちゃんは美人ママの
娘である。
 その美貌はママに似て、歳頃になって、益々
輝きを増していた。
 この、ちいママを目当てに、日夜、通う男
もざらである。
  …… 
 さて、そんな、キャバクラ「栗」に、Dear
風呂組の魔の手がヒタヒタと伸びつつあった。
  ……
 筆者はこの日、たまたま、この店に足を運
んでいた。
「あはは、可笑しい」
 コロコロと笑いながら、八ちゃんは客と談
笑していた。
 向かい側の席には、同じく、客と談笑する、
利美がいた。
「いらっしゃいませー」
 栗ママの透き通った声が店内に響いた。
 ポケットに手を突っ込み、どう見ても、堅
気のお人ではないような、二人組がやってき
た。
 一見、若作りの二人だが、良く見ると、結
構、歳はいってそうだ。
 檻々組の暴阿観留と来流信だ。
 「いらっしゃーい。観留さん、信さん」
 理容子とようこは、二人に席を勧めながら、
おしぼりを渡した。
 理容子は信におしぼりを渡しながら、言っ
た。
 「信さん。お久しぶりね~。どうしてたの?」
 信はそれまで、しかめ面をしていたが、理
容子に話しかかられた途端、相好を崩して、
にやけ顔になった。
 「いやー。理容子ちゃん、なんだかんだ、こ
こん所、忙しくてねー。組長に頼まれて、カ
フェの修理とかね。いや、ほんと、大変だっ
たよ。俺は大工じゃ、ねーっつーの」
 「ようこちゃん。おひさー。結婚しよー」
 観留はにやにやしながら、日常の挨拶のよ
うに言った。
 「やだー。観留さんったら。もう何人と結婚
してるの?」
 観留はあははーと笑いながら、席に着いた。
 楽しげな笑い声と、時折、「きゃー」とい
う嬌声が店内には響いていた。

 「いらっしゃいませ」
 ママの声が少しくぐもっている様に聞こえ
たのは筆者だけではあるまい。
 入り口の方を見ると、サングラスを掛けた
若い男が二人いた。
 その二人とも、男の私が言うのもなんだが、
なかなかの美男子だ。
 今迄、笑っていた、八ちゃんはその二人を
見て、急に顔を曇らせた。
 「やだ、Dear風呂組の干す徒だわ」
 向こうで接客をしていた、阿笛美がやって
来た。
 「あいつら、この前、ここに来て、したい放
題よ。あたしなんか、スカートの中まで、手
を入れられて……」
 「いやねー。どうしよう」
 ようこは不安そうに言った。
 「ようこちゃん。お願いね」
 ママはようこに接客するように言った。
 ようこは仕方なさそうに、おしぼりを持っ
て、Dear風呂組の干す徒が座っているテーブ
ルに向かった。

0 件のコメント:

コメントを投稿